■来年4月施行目指す
翁長知事が知事選の公約にしていた「公契約条例」制定の動きが加速している。来年2月定例県議会に提案し4月からの施行を目指している。
国、県、市町村は最小の経費で最大の効果を上げるため、公共工事や物品の購入、ごみ収集、ビルメンテナンスなどの業務を民間企業に委託し、多くは競争入札で受注者を決定している。 ところが公共サービスの効率化やコスト縮減が図られる中、景気低迷や厳しい財政事情を背景に事業者間で価格競争が激化し、過度な低価格での契約や受注が増大。その結果収益性が低下し労働者の賃金にしわ寄せされるなど、良質な労働力確保や公共サービスの質の低下が懸念されるようになった。
そこで公共事業に従事する労働者の適正な労働条件を確保するため全国の各地域で公契約条例の制定を求める声が上がり、沖縄県も翁長知事の知事選公約に基づいて「公契約に携わる経営者等の経営の安定や労働者の労働環境の整備を促進することで公共サービスの品質の確保および向上を図り、もって地域経済の活性化や振興、地域社会の持続的な発展に寄与する」として同条例が制定されることになった。
■規制型でなく理念型
県の公共事業や公共サービスは、県民生活を支えるために必要不可欠であり、それを現場で支える労働者の賃金を適正な水準に引き上げようというものだ。2009年に千葉県の野田市が初めて制定し全国に広がっている。都道府県では奈良、長野、岐阜、岩手、愛知の5県が制定している。
同条例には賃金の下限額をあらかじめ明示し、元請けだけでなく下請けなどの事業者にもそれ以上の賃金を義務付ける「規制型」と、義務付けのない「理念型」があり、沖縄県は理念型を予定している。これに対し労組側からは「賃金を事業者任せにせず、非正規を含め労働者が安心して働けるよう条例で賃金の下限額をあらかじめ明示すべきだ」と規制型を求める声がある。
しかし一方で下限額の明示が逆に賃金を引き下げる懸念もあり、当面は他の5県同様理念型でスタート。適正な賃金水準の実効性への懸念は「そこは事業者をしっかり見極めて契約することで確保できる」とみている。
■県内市町村は制定無し
県内市町村ではまだ制定はないが、石垣市も民間企業への公契約は多く、9月定例議会の一般質問で取り上げられた建設業の「週休2日制」導入と併せ検討する必要はあるだろう。
建設業は危険、きついなどという労働環境を理由に若い人を中心に就業者が少ないため、賃金を高くして求人しているが、それでも厳しく入札辞退や入札不落などが起きているという。
そこで条例で建設労働者が安心して働けるよう賃金はやはり強制力のある「規制型」でしっかり保証し、さらに週休2日制も導入するなどの労働環境整備で人材確保につなげ、建設業を活性化する必要がある。
八重山を含め沖縄は観光を中心に経済が好調な今も、非正規労働者や母子世帯などの貧困や子どもの貧困が深刻な問題だが、公契約条例はそれを最大限減らすものであるべきだ。