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市長室の隠しカメラ設置は必要か

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 ■判断基準はあるか

 石垣市議会の12月定例会が開会した4日、市民を驚かせたのは、伊原間牧場でのゴルフ場計画をめぐり、市有地の貸し付けを求めて中山市長を脅迫したとして職務強要罪で逮捕され、保釈された今村重治議員が出席したことだ。市長や一部与党議員が対応の協議に時間を要し、開会は大幅に遅れた。

 市議2人の逮捕の決め手となったのは、市長室の隠しカメラや録画録音による証拠と言われている。

 市長室は、言うまでもなく市長の執務室であり、来客応対の部屋でもある。その市長室に隠しカメラや録画録音機が時と場合によっては設置されるということが、長浜信夫議員の質問で明らかになった。

 大得英信企画部長の答弁によると、隠しカメラの設置は不当要求防止対策として安心安全、秩序維持など犯罪防止のためだという。大得部長は「不当な要求には屈しない」と強調、中山市長は「市民一人一人を録画しているわけではない。何度も行われる行為に対応し警察にも相談して行った」と述べた。

 今村議員らから不当要求を何度も受けたとして隠しカメラを設置したことになる。今回は「警察にも相談して」設置したようだが、不当要求の基準や脅迫の判断は難しく、恣意(しい)的になってしまう恐れもある。

 ■市民に不安と疑問

 中山市長は、市長室での録音録画を批判した長浜市議に「これを、非難するのであれば、結論は出ていないが犯罪者を擁護し、被害者である私を非難するもの。とんでもない行為だ」と反論。加害者、犯罪者と断定するかのような発言だが、今村議員は起訴内容を全面的に否認している。罪が確定していないからこそ、与党も辞職勧告決議は出せないと判断したのである。

 今後は、司法の判断を待つことになるが、仮に今村議員らが罪に問われなかった場合、隠しカメラで撮影・録画した行為は市民にどう映るのだろうか。大得企画部長は市長室の透明性についても言及したが、市民から不安や疑問の声が上がるのは至極当然だ。

 ■プライバシーの侵害と圧力

 石垣市では今後、反自衛隊運動やリゾート施設・ゴルフ場の反開発運動が盛り上がりをみせるだろう。運動を展開する人たちの要請や陳情に隠しカメラが使われる疑いはぬぐいきれない。カメラで撮影された画像・音声が反対市民への妨害や圧力に利用されるのではないかと危惧する。

 教科書問題の際、反対署名をした市民に対し、賛成派市議が圧力を加えたことを想起させる。問題は曖昧にされて終息したが、圧力を受けた市民は心に深い傷を負った。

 これは、憲法で保障された思想信条の自由や請願権を否定する行為であり、個人情報を侵害するもので到底許されるべきものではない。議員辞職にも値する行為でもあったはずだ。

 石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会議の自衛隊反対署名に対する精査の中止を求める申し入れに中山市長は「申し入れ記載の通り尊重し、署名者が萎縮や不当に差別されることはない」「精査することが、個人情報やプライバシーの侵害、署名行動を萎縮させることにはつながらない」と述べている。当然のことだ。

 しかし、過去には不当な差別、妨害、圧力、萎縮につながった事例があったことを忘れてはならない。恣意的に運用・利用されれば、恐怖社会の再来で民主主義は死んだに等しくなる。


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