■5年超の契約社員らに適用
パートやアルバイト、契約や嘱託社員など労働契約期間が1年や6カ月などと決まっている「有期雇用者」を5年以上継続雇用した場合に、本人の申し出により期間の定めのない「無期契約」にする「無期雇用転換ルール」の運用が来年4月から本格開始される。
同制度を創設した2013年4月の労働契約法改正から5年が経過するためだが、本人から申し出があれば定年後の再雇用などの特例を除いて企業は拒むことはできない。本格的な運用開始まで5カ月を切ったが、企業側には周知徹底されているだろうか。
沖縄労働基準局雇用環境均等室では、厚労省がインターネットで「無期転換サイト」を設けて対応しているほか、県内では労働関係のセミナーやチラシで周知しているとしており、八重山の企業もしっかり対応すべきだ。
■正社員に転換の企業も
有期雇用の契約社員やパート、アルバイトと言えばほとんどすべてが非正規労働者だ。正社員を望む人たちにとって非正規雇用は不合理な労働条件で立場は不安定だし、企業側の都合による急な契約打ち切り、いわゆる「雇い止め」で突然収入を絶たれる不安もある。こうした不利、不安の防止のために労働契約法を改正し、新たに作られたのがこの「無期雇用転換制度」だ。
ただ無期契約転換は必ずしも「正社員」にすべきということではない。制度上賃金など労働条件はそのままでも良いとされているからだ。しかし、いつ契約打ち切りの「雇い止め」されるかの不安が解消され、「雇い止め」を恐れてセクハラやパワハラ、過重労働を我慢せずに済むのは前進だろう。
特に全国的な人手不足の中、無期転換が非正規労働者の未来を開く処遇改善のきっかけになると社労士など専門家の声もある。安定的な人材確保のため既に制度を先取りし、国の助成金制度も活用して正社員化などに待遇改善した企業も少なくないからだ。
一方で改正案は「雇い止め促進法」と社民や共産党が反対したように懸念の声も少なくない。罰則規定がないため5年の期限を前に契約を打ち切るルール違反の続出が懸念されているが、そこは沖縄労働基準局としてしっかりとした指導体制が求められる。
■非正規の未来開く制度に
観光に支えられて経済も雇用も好調な沖縄だが、それでも雇用は2人に1人が非正規だ。正社員の待遇も良くないが、非正規はなおさら。この結果、世帯年収200万円以下が約2割を占め、全国ワーストの貧困県だ。その雇用形態がいかに沖縄に暗い影を落としているかは、子どもの貧困率、母子世帯率、児童扶養手当受給率、若年出産率、大学進学率、高校中退率などあまたのワースト記録でも明らかだ。
それだけに八重山の企業も無期転換を機に、正社員化など人材確保のための処遇改善に努めてほしい。ましてやルール違反の「雇い止め」はあってはならない。正社員化や待遇改善には国や県の助成金制度もある。「貧困」を根底にした沖縄の数々のワースト記録を止めるのは、企業の意識変革と努力で非正規雇用をいかに少なくし、いかに賃上げしていくか、などの処遇改善にかかっている。