換気設備を導入するなど家畜輸送用に改造された琉球海運の「かりゆし」(全長154・07㍍、9943㌧)は17日、運航を開始した。石垣港で同日夕から子牛約650頭の積み込み作業を開始、終了後に宮古島向け出港した。那覇を経由して鹿児島に向かう。船内には開閉窓が38カ所設置されたほかミスト(噴霧器)150器、通風機15機が導入されるなど船内環境が大幅に改善されており、生産農家は「牛のストレスが大幅に軽減されるだろう」と期待している。
石垣、宮古で積み込まれた子牛は2日間かけ鹿児島まで運ばれ、全国各地に陸上輸送されている。JAおきなわによると、先島からの出荷頭数は2016年度で県全体の6割を占める1万2709頭。市によると、同年度は八重山から9600頭余りだった。
ただ、これまでの輸送船「にらいかない」(全長149・57㍍、5613㌧)では直射日光を受ける屋外デッキに積み込まれていたため、子牛が熱中症で死んだり弱ったりするなど夏場の輸送に課題があった。「かりゆし」は9月初旬から1カ月かけ、尾道造船所(広島県尾道市)で改造、換気対策が強化された。
この日午後2時から就航セレモニーがあり、JAおきなわの大城勉理事長は「夏場の船舶輸送には子牛への負担が大きく、受け入れ先の購買者への経済的損失が課題だったが、輸送船を改造した。八重山、宮古の肉用牛繁殖生産がますます発展することを願う」とあいさつ。中山義隆石垣市長、前鹿川健一竹富町副町長も祝辞で「子牛のストレスが軽減され、安全安心な子牛を購買者に届けられる」「離島の畜産業に明るい展望が開ける」と喜んだ。
関係者で鏡開きを行ったあと乾杯をして就航を祝い、船内を見学した。
石垣島和牛改良組合の佐久盛繁組合長(61)は「ミストなど換気施設が整備されて非常に良い。夏場の運搬は暑さが大変だったので、子牛のストレスは減るだろう。無事に購買者のもとに届くと思う。組合としてはこれからも良い子牛づくりに頑張りたい」と話した。
かりゆしは、JAおきなわと琉球海運、セリ牛事故共助積立金運営委員会などで組織する家畜会場輸送協議会(大城勉会長)が県の一括交付金を活用し、2億4840万円をかけて改造した。