与那国島への陸上自衛隊沿岸監視部隊配備計画で、建設予定地に含まれる町有地の一部約13㌶を借りている農業生産法人㈲南牧場が町との間で結んでいる使用契約を解除する方針を固めたことが13日までに分かった。南牧場は配備に必要な面積約25㌶の5割以上を占めており、町が使用契約を解除した後に防衛省側と本契約を結べば、陸自配備に向けた用地造成や工事などが加速しそうだ。
同牧場は5日に開いた同牧場組合の総会で、自衛隊誘致推進の鳩間正八氏が代表代行に就任し、所有物件補償の同意について採決を行ったところ賛成5、反対2、欠席1の賛成多数で交渉同意を決定。鳩間代表代行は「多数決で決まったことなので、粛々と進めていく」と話した。
一方、今回の総会で代表を辞任した大嵩長史氏は「防衛局と交渉しないと決めたのに、手のひらを返したように交渉について再考することは考えられない。多数決の結果、同意することになったのは残念」と話している。
防衛省と町は、昨年6月に町有地賃貸の仮契約を締結しており、本契約を結ぶ条件として、同牧場との賃貸契約解除と防衛省による所有物件などの補償が付記されている。
仮契約が結ばれて以降、約半年にわたって防衛省・町側からは賃貸契約や補償などについて説明がなく、組合からは不安や不満の声も挙がっていた。
補償額についても組合側の希望額と防衛局側の提示額に隔たりがあり、これ以上の進展が望めないと判断した組合側は2月5日、沖縄防衛局に今後の交渉に応じないことを伝えた。
同組合によると補償額は当初、組合が4億円を提示したが、防衛局側は2億1千万円を提示。その後、一部の組合員が防衛局を訪ね、3千万円を上乗せした2億4千万円の妥結案を引き出したという。
これについて、沖縄防衛局は「答えられない」としている。
同組合の今回の決定について外間守吉町長は「契約に沿って所定の手続きをするだけ。静かに見守ってほしい」と述べるにとどめた。
防衛局の広報担当は「引き続き、与那国町と地元住民に沿岸監視部隊配備を理解してもらう努力をし、配備に向けて取り組んでいく」と話している。
自衛隊配備に反対している与那国改革会議の崎原正吉議長は「本契約などがどうなるか、今後の成り行きを見守りたい」と述べた。
与那国防衛協会の金城信浩会長は「このまま何事もなく進んで、1日も早く自衛隊が配備されてほしい」と話した。