2015年度から全中学生に配布してきた副読本「八重山の歴史と文化・自然」について継続して刊行することを検討していた石垣市教育委員会は、「南京事件や従軍慰安婦など見解が分かれる事案を含む副読本を配布することは、市長や市議会、市民の理解を得難いと思量するものであると判断した」として、次年度以降の刊行を控える方針を示していることが分かり、副読本編集委員会の田本由美子元委員長ら5人が20日午前、市教委を訪れ、継続発行を求める要望書を提出した。
大得英信教育部長によると、副読本の発行は2013、14年度の一括交付金事業として行っており、本年度の配布分までで事業は終了する。昨年6月市議会で南京事件や従軍慰安婦に関する記述について見直しを求める意見が出たため、一部修正して継続刊行を模索したが、執筆者と折り合いが付かなかったという。
本年度で事業が終了するため、定例会では議論せず、非公式の意見交換で教育委員が話し合った結果、継続刊行を断念することを決めた。
大得部長は取材に「訂正や見直しができれば継続していたかといわれれば、正直ないとはいえない。やり直しができないかを検討し、執筆者の方々にも伝えたが、『できない』とのことだったので、執筆者の考えを尊重しようということになった」と説明した。
要望書については2月定例会で教育委員に配布し、3月定例会で議題にするかどうかも含めて今後の方向性を再検討するという。
田本元委員長は要請で「独自に副読本を作るという、市教委の先見性の高い姿勢に押されながら作業に当たらせていただいた。郷土を学ぶ姿勢を再度考えていただきたい」と述べた。