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去る6日は広島平和記念日、きょうは長崎

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 去る6日は広島平和記念日、きょうは長崎原爆の日、15日は終戦記念日。8月の日本は鎮魂の月である▼没後20年を迎える国民的作家司馬遼太郎は、戦車兵として満州に学徒動員された速成訓練の陸軍将校だった。ソ連参戦が近いことを察した軍は「本土決戦」に備え、虎の子の戦車部隊を関東平野に転進させた▼司馬が敗戦を迎えたのは栃木県佐野市。夏のある日、大本営から参謀が来て本土決戦の作戦を指示したという。米軍上陸は、相模湾か東京湾。戦車部隊はこれを迎え撃つべく打って出る▼大八車を引いて逃げまどう避難民と交錯して戦車が前に進めないはずだが、交通整理はどうするかとの問いに、参謀は「轢っ殺して行け」と言い放ったという。司馬の「歴史と視点」(新潮文庫)にある。「時間稼ぎの沖縄戦」「戦争マラリア」と同じ軍の論理▼「終戦」と呼ぶことに違和感を覚える。だが、まごうことなき「敗戦」であり、言葉のすり替えにすぎない。「一億総ざんげ」が国民の歴史観をあいまいにした。戦争責任を明確にしたドイツとの際立った違い▼司馬は敗戦までの昭和前期を「異胎の時代」と呼び、小説作品としては一切扱わなかった。健在であったなら現代をどう評しただろう。戦前回帰の色濃い改憲に意欲を示す総理がいるこの国を。(慶田盛伸)


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