旧暦6月。この炎暑を俗に「るくんぐぁつてぃだ」といい、岩崎卓爾翁は「六月炎熱」の字をあてた。夜はシンガポールやマニラの夜と同じ気温で蒸し暑く寝苦しい熱帯夜。その日数の長さは石垣が日本一。以上は大仲浩夫著「八重山の気象歳時記」(南山舎)から引いた▼「るくんぐぁつ」はまた、「来夏世(くなつゆ)」の豊穣を乞い願う豊年祭のシーズン。昨日は大浜、きょうは川平。時節の到来を待ちかんてぃーする青年たちも多いか▼村々、あるいは島々の祭りは、それぞれに多少なりとも趣が違う。御嶽に旗頭が林立し踊りが奉納される村。あるいは草荘の来訪神が家々を予祝する島。または舟こぎで海のかなたから豊穣を招く島々▼形態やささやかな違いはあれど、それがシマの誇り。共通するのは今年の豊作への感謝と、来夏世の稔りへの予祝、共同体の繁栄を乞い願う世(ゆう)願い▼孫娘の一人がお祭り大好き。豊年祭も、お盆も、祭りとつくもの何でも好き。大興奮である。とりわけ弥勒行列に「ミルク様、カワイイ」と連呼したのには笑った。4歳女児の「かわいい」は最大級の賛辞であり魔法の言葉▼ことしもまた、地域の精神文化である祈りの心の中に身を置こう。村々にも島々にも、私につながる人たちにも来夏世があることを乞い願うために。(慶田盛伸)
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