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役場移転住民投票は疑問

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■法的拘束力ない投票結果

 竹富町は今年、またも町役場移転をめぐり大きく揺れそうだ。それは川満栄長町長が先月17日、船浮での町政懇談会で、役場移転の是非を問う住民投票を今年9月以降に実施する意向を初めて表明したためだ。

 具体的な実施時期はこれから詰められるが、9月には任期満了に伴う町議選も予定されている。住民投票が実施されると、議員選と併せて町内はまたも賛否が激しく対立するのは必至。果たしてこの住民投票で1963年の初決議以来50年余の長年の懸案に決着を付けることができるかどうか。今年最大の注目点となるものだが、しかしそれは厳しいと言わざるを得ない。

 なぜなら投票結果に法的な拘束力がなく、過去に結果が覆された例が全国的に少なくないからだ。竹富町でも2004年に石垣市との市町村合併をめぐり住民投票が実施され、賛成が反対を100票上回ったが、議会は同議案を否決し、合併は見送られた。

 名護市では1997年に普天間移設に伴うヘリポート建設の住民投票で反対が過半数を占めた。しかし当時の市長は逆に受け入れを表明し辞任した。

 

■予算の無駄?住民投票

 役場移転も確かに住民投票で町民の民意は明確になる。しかしその結果を賛否両派とも町民が素直に受け入れるかどうかははなはだ疑問だ。仮に賛成が多数を占めた場合、町長はその民意を受けて計画通りに移転を推進できるかどうか。たとえ一部とはいえ反対を押し切って移転を強行すれば、これが猛烈な反対運動に発展し、町長は苦境に追い込まれることが予想される。

 逆に反対が多数を占めた場合、役場移転を公約に掲げて当選した町長は、きっぱり移転を断念するのかどうか。賛成の住民はそれを善しとするかどうか。仮にこの結果を受けて問題は沈静化しても、恐らく何年か後にまた噴出、元の木阿弥になりかねない。

 しかも住民投票の最大の波乱要因は、賛成7、反対3の野党多数で可決した住民投票の要請決議が、他の自治体のように「町民の過半数でなく、3分の2の民意をもって移転は進められるべきだ」と厳しい条件を突き付け、これに町長が「無謀な要求」と反発、双方が激しく対立しているところにある。

 

■二者択一でない解決策を

 このようにみてくると早期決着の保証のない住民投票は、町民にとって予算の無駄、時間の無駄、労力の無駄であり、果たして実施する必要があるかどうか疑問と言わざるを得ない。

 逆に言えば住民投票で決着を図るとするなら、「結果に従う」という「拘束力」が町長、議会、町民のすべてに必要になる。そういう担保が得られないなら財政負担も大きい住民投票はやめて、町長や議会は移転賛成・反対の二者択一でなく、両方が並び立つ新たな解決策も考えるべきだ。

 川満町長は単独自治100周年の今年、何とか解決への道筋を開くため、近く大学教授ら約10人程度で第三者機関の有識者会議を発足させる。同会議でその方策の論議も期待したい。

 町長や議員各氏が自覚する百害あって一利なしの“政争の具”は、双方の大局的な協調で早く取り除きたい。


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