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不採択は多数与党のおごり

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■誘致派の請願は継続審議に

 自衛隊問題で注目を集めた石垣市議会は17日、総務財政委員会(平良秀之委員長)で誘致賛成と反対の請願、それに候補地に隣接する開南公民館から出されていた反対の陳情を審議し、自衛隊反対の請願や陳情を不採択とした。一方誘致賛成派の請願は継続審議とし18日の本会議でも採決された。

 自衛隊配備問題は石垣市だけでなく、八重山全体の将来を左右する重大な問題でありながら、突っ込んだ議論はなく低レベルの議論に終始した。これで市当局や議会はいいのだろうか。賛成派請願だけの採択は理解に苦しむ。

 市長は自衛隊誘致の賛否の態度を明らかにしていないと言いながら「議会での議論や住民の意見を聞きながら判断したい。市議会の議論は賛否の判断材料となる」と答弁した。また、昨年11月の若宮防衛副大臣から提出された資料以外に情報は入手していない。情報が不足している。自衛隊に情報公開や自衛隊主催による説明会を求めていく−との答弁を繰り返した。

■市長、住民投票に否定的

 そのうえ、国防は国の専権事項であり、住民投票はそぐわないと否定した。耳を疑うような答弁だ。市民の情報はマスコミ報道だけだ。

 候補地とされた開南など隣接する地域にとって寝耳に水であったはずだ。突然降って湧いた問題に不安を抱くのは当然だ。静かで小さな公民館が二分されようとしている。由々しき事態だ。

 市は防衛局の求めに応じ資料を提供しているが、建設予定地に市有地が含まれるなど事前に市と調整したのではとの疑念さえ覚える。市は市民への情報提供と言いながら広報掲載はなしだ。出回っているのは、保守系市議が作成し団体名で出されている小冊子だ。資料の出典も明記されていない。これについてある週刊誌が「防衛省の使用規約に反した資料等の無断引用もあった」と報道している。事実だとすれば遺憾だ。

 石垣市は説明会を防衛省に求め、主催しないという。市の命運を国に丸投げするのが首長の役割であろうか。責任逃れだ。また、地方自治を忘れているのではないか。市長は国防は国の専権事項というが地方自治の精神に立ち返り、さらに、戦時中の町村役場の吏員の苦労やマラリア地獄、台湾疎開など八重山戦の教訓から学ぶべきだ。

 一般質問の前から議会では「反対派はいくら議論しても噛みあわないから決議したほうがよい」という与党議員の発言があった。意見陳述もさせず議論が噛みあわないから決議するというのはおごりであり不遜だ。問答無用の発言はファシズムに通ずる危険極まりないものだ。

■市民目線の議論すべき

 尖閣を引き合いに国会議員並みの国防論を展開した議員の発言は戦前の満州侵略を正当化し、鬼畜米英を叫んだその裏返しの嫌中韓としか映らない。対話を閉ざしてどうなるか。このような態度は積み上げてきた民間交流さえも壊しかねない。

 元自衛隊統合幕僚長は、自衛隊は国民の生命財産を守るのではない。国民を犠牲にしても国家体制を守るという趣旨を述べている。有事(戦争)が始まれば自衛隊は交戦し、住民を守ることへ手が回るはずがない。島しょでの離島奪還作戦など実施されれば島民は終わりだ。

 だからこそ「石垣市国民保護計画」などを踏まえた市民目線に立った議論が必要なのだ。議論もなく、不安を抱える市民の陳述も許さず誘致派の請願のみを採択し継続審議としたのは均衡を欠く汚点議会である。


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