映画界の巨匠・スティーヴン・アラン・スピルバーグ監督の名作「ジュラシックパーク」の序章は、樹液に閉じ込められた蚊から、恐竜のDNAを採取したところから始まる▼太古から絶えることのない生物だが、いまもなお生活環境に順応、進化し続けているらしい。春を迎え、気温が上昇すると住民は蚊に悩まされる。部屋に1匹の蚊が入り込むと眠れない。野外での農作業などは、もっと大変である▼昨年から蚊が伝搬するデング熱やジカ熱が大きく報道されている。東京ではこれまで考えられなかったデング熱の感染患者が相次ぎ、またジカ熱も各国に広がり、ブラジルでは小頭症の赤ちゃんが増加、問題化している▼問題なのはデングウイルスやジカウイルスを媒介するヒトスジシマカは、秋田および岩手以南の全国に生息し、そこでウイルス保菌者が蚊に刺されれば、感染が広がる可能性が高い。しかも、いったん感染者がでると莫大(ばくだい)な防除費用を要する▼八重山ではヒトスジシマカも生息しているし、ネッタイシマカの生息北限とも言われている。さらにマラリアを媒介するコガタハマダラカは、依然として存在する▼蚊の根絶は不可能で、対応は医療機関の連携しかない。万一の事態に備えて、体制を整えてほしい。(黒島安隆)
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