八重山には独自の生態系があり、カンムリワシやイリオモテヤマネコ、ヨナグニサンなどの希少種が天然記念物として保護されている。その一方で、与那国島では環境省のレッドデータブックで絶滅危惧ⅠA類のヨナグニマルバネクワガタや同Ⅱ類のアオナガイトトンボといった希少種が絶滅の危機にある。今後、土地改良などで生態系が壊されることも懸念され、希少種を守るため天然記念物に指定し保護していくことが求められている。(高良新輝記者)
これら希少種が天然記念物に指定されていないことについて、町教育委員会文化財担当の村松稔さん(36)は「話は何度か出たが、希少種などの周知が不十分な上に町民の関心も低いため、そのまま尻すぼみになっている」と経過を話し「今後は専門家を招いて講演会などを開き、希少種の重要性を知ってもらうことで将来的には天然記念物化につなげたい」と話す。
与那国は地理的に台湾に近いため、郡内でも他の島々では見られない固有種や台湾との共通種が分布している。
世界最大級のガ「ヨナグニサン」は県指定天然記念物に指定され、同町内のアヤミハピル館で繁殖やその生態系を紹介している。
このほかにも島内には100種以上の希少種や固有種が生息しているが、天然記念物に指定されている種は少なく、保護も十分ではないのが現状。
2009年の自然保護学会では沖縄大学地域研究所特別研究員の下地幸夫氏が論文で「ヨナグニマルバネクワガタが商業的な目的で乱獲され、絶滅の危機にひんしている」と訴え、保存に向けた早急な対応を求めている。
11年には環境省が種の保存法に基づきヨナグニマルバネクワガタを「国内希少野生動植物種」に指定。捕獲や譲渡が原則禁止された。
だが、規制については与那国空港などでチラシを啓示し、採取禁止を啓発する程度で具体的な保護や繁殖などの取り組みは行われていない。村松さんによると、昨年、繁殖地で同クワガタはほとんど見られなかったという。
村松さんは「地域の希少な生き物を学ぶ教材にしようとしても数が少なく、子どもたちが触れる機会もめったにない。保護するだけでなく、増やしていくことも必要ではないか」と話す。
環境省石垣自然保護官事務所によると、天然記念物に指定され、保護増殖事業の対象となれば、個体の増殖や生息環境の保護も可能になるという。今後は保護だけでなく、繁殖させていく取り組みも求められる。