中高校の卒業式が間近だ。大勢の子どもたちが、進学や就職への期待を胸に学びやを後にするが、高校のない与那国町や竹富町の生徒は、親元を離れて進学する▼近年はいくつになっても幼い若者がいる。一般的な常識が通じない人も時折見かける。その中で竹富、与那国両町の子どもたちは、いち早く「自立」を迫られる。中には中学卒業を機に、一家で石垣市内や本島に転居する家族も▼早い独り立ちを心配したり、仕送りなどそれぞれの事情を抱えながら引っ越しを決断しているが、不思議なのは高校の誘致運動が、町内でもなかなか起きないこと▼地域が過疎化していく大きな要因は教育、医療福祉、雇用、住居だろう。その中でも特に教育環境は密接な関係にある。ところが、「高校までは地元で」という声をなかなか聞かない。多くの町民が早い「自立」を自ら経験しているからだろうか▼だが子どもの中学卒業に合わせ、転居する人は後を絶たない。医療問題だとすぐに声は上がるが、「高校分校を誘致しよう」という話はあまり表面化しない▼竹富、与那国両町は先に話題になった「消滅自治体」論で、その恐れがある町に挙げられた。離島県の離島郡は常に過疎の問題と向かい合う。振興策で校舎改築も必要だし、教育環境整備は重要だ。そこにもうひとつ、高校進学問題に目を向けよう。(黒島安隆)
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