右肩上がりで好調に推移してきた八重山家畜市場の子牛の平均価格はついに12月のセリで1頭当たり70万円直前まできた▼雄子牛の平均は74万円を超え、雌も64万円近くまで跳ね上がり、平均は約69万8000円を付けた。この価格は数年前まではセリの最高値とほぼ同水準か上回る。それが平均価格になるとは誰もが予想しえなかった驚きの高さだ▼全国的な素牛不足に加え、牛肉消費が上向き、枝肉価格が値上がりしていることが背景にあり、今後、さらなる価格上昇も期待される。ことし最後のセリを最高の形で締めくくり、郡内の畜産農家も来年に期待を込め、笑顔で越年できそうだ▼だが、手放しでは喜べない現実も刻々と迫っている。10月に関係12カ国で大筋合意した環太平洋経済連携協定(TPP)が数年後には発効する見通しだ▼TPP発効後、牛肉は関税が現在の38・5%から、段階的に9%まで引き下げられ、安い外国産牛肉が入りやすくなる。生産者保護のため一定の輸入量を超えた場合、関税を引き上げる「緊急輸入制限(セーフガード)」が導入されるが、影響は避けられそうにない▼生産者には過去最高の高値が続くうちに体力を温存し、来るTPP発効への備えが必要だろう。その意味でも来年のセリ価格の動向が気がかりなところだ。(下野宏一)
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