「あなたも、世界中の言葉を話せます」。ふた昔ほどの話だが、竹富島で知り合った研究者が自信たっぷりに話した▼携帯電話のような端末機器に向かって話すと、その言葉が某大学のコンピューターに送られ、解析ののちに希望する国の言葉に変換されて届くという。リアルタイムの翻訳システムだ。仕組みはシンプルで、実現すれば便利だと思った▼その後、研究者と再会することもなく、話を忘れていた。ところが2年ほど前に、それに似たインターネット国際電話サービスが始まったと聞いた。しかしあまり話題にもなっていない。実用域にまだ達していないのだろう▼翻訳システムには膨大なデータが必要で、さらに方言や個人のアクセントが影響する。かつて音声入力ワープロソフトを導入したことがあるが、社内で正しく認識させることはできなかった▼翻訳システムはまだ時間を要するのだろうが、昨年末に聴講したニューヨーク市立大学の教育担当ディレクターの講演では、コンピューターが記事を書いていると聞いた▼例えば地震を感知し、自動的に文章を書いて新聞社に送るのだという。確かに省力で合理的だろうが、これほど怖いものはない。コンピューターは賢く便利だが、人間の能力を超えるものではない。(黒島安隆)
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