JAおきなわ八重山地区畜産振興センターが運営する八重山家畜市場で取引される子牛の平均価格は、今年1月から6カ月連続で上昇している。過去最高だった昨年12月の平均価格を2月で更新、6月は60万円台を突破した。子牛以外を含めた販売総額は25億6660万円となり、年間で50億を突破する勢い。高値の背景には全国的な素牛不足があり、今後も高値傾向が続くとみられているが、生産者側にはこの間、母牛の改良や子牛の飼養管理の徹底など生産基盤の強化が求められそうだ。
市場関係者によると、2010年に宮崎県で発生した口蹄(こうてい)疫に伴う牛などの大量処分、11年3月11日の東日本大震災の福島第1原発事故に伴う牧草汚染などの影響で、全国的に繁殖牛が少なくなっていることが高値の主要因という。
全国の畜産事情に詳しい㈲水迫畜産水迫ファーム(鹿児島県指宿市)の水迫政治代表は「口蹄疫や牧草汚染で子牛が安くなって畜産をやめたり、高齢化でやめたりする人が多かった。子牛が足りないので値段に反映されている。全国的に急激な増頭がない限り、高値は続くだろう」と説明。
23年前から沖縄で子牛の買い付けを行い、八重山家畜市場でも大手購買者となっている水迫代表は一方で「沖縄の和牛改良は進んでいるが、まだ鹿児島には劣る。石垣島は繁殖に適したところなので、母牛の血統をよくし、肉質が良く枝肉量のとれる素牛を生産してもらいたい」と要望する。
石垣島和牛改良組合(佐久盛繁組合長)では組合員に▽1農家1増頭(母牛)▽飼養管理の徹底による子牛の1日1㌔以上増体▽出荷前の削蹄の完全実施―などを求めており、佐久盛組合長は「われわれがやるべきことはたくさんある。セリ値には周期があるので、高値がいつまで続くか分からない。この間にいい母牛をつくり、どんなときでもきちんと対応できるようにしなければならない」と話す。
母牛改良では、3市町が一括交付金を活用し、購入額の半額(上限30万円)を補助する優良雌牛導入事業をJAに業務委託して実施している。
JAおきなわ八重山地区畜産振興センターによると、本年度は計190頭(石垣市80頭、竹富町80頭、与那国30頭)を計画。幸喜英信畜産課長は頭数確保を課題に挙げる一方、「一括交付金があるうちに母牛を改良しないと産地間競争に勝てない」と指摘。
県八重山農林水産振興センター農業改良普及課の小山裕美子主任技師は「母牛の改良、栄養価の高い牧草の自給率の向上など、先を見据えた経営感覚で生産基盤を固めることが必要だ」としている。