なぜ患者たちは人間扱いされなかったのか。名護市の国立療養所沖縄愛楽園内に開設されたハンセン病の誤った認識と差別、国による強制隔離政策の歴史を後世に伝える交流会館が、一般に公開されている▼仕事柄、取材からこれまで知らなかった実態に接することがある。８年前、人権週間の企画でハンセン病の元患者たちが、偏見と差別に苦しみながらも人権回復を果たした苦難の道のりの証言取材もその一つだった▼取材を進めるうちに、元患者たちに行われた強制的な収容、子孫を絶つ断種、妊娠中絶、終生隔離など国による非人道的な行為の数々を知り、これは真実かと疑ったほどだ▼元患者たちは、心ない言葉に傷つきながら「毎日泣いて30歳まで生きたらいいと思った」「僕の夢は学校の先生だった。僕は時間が戻せるなら60年前に戻って夢を果たしたい」など、断腸の思いの証言に衝撃を受けた▼中には偏見と差別に耐え切れず命を絶った者もいた。取材を通して人を死に追いやるのは何も刃物だけではなく、言葉や偏見こそが恐ろしい；凶器；になるということをあらためて学んだ▼治る病気でありながら国によって「怖い病気」として強制隔離された元患者たち。二度と同じような過ちを繰り返さないためにも、ハンセン病の差別の歴史を忘れてはならない。（鬚川修）
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