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Channel: 八重山毎日新聞社
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教育は静かな環境の中で

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■耐えて信頼回復を

 学年末の教員による飲酒運転・ひき逃げ死亡事故。学年始めの中学生の飲酒運転・事故逮捕|という不祥事が立て続けに発生した石垣市。事故・不祥事という一語では片付けられない「事件」だ。これにより大きく信頼を失った学校。これまで何度、信頼回復を誓い対応してきたことだろうか。とても誓いどおり運んだとは思えない。だが、今は耐えて前に進まなければならない。目の前の児童生徒たちは日々成長しているからだ。

 まず、静謐(せいひつ)な環境のなかで子どもたちを教育していかなければならない。私たちは過去の「事件」を忘れることが多い。忘れ方が早いと言った方がいいかもしれない。そうならないために学校、教員を取り巻く周辺は、静かで学び合う環境でなければならない。

■教科書採択を前にして

 八重山地区は2年前の教科書採択で大きく揺らいだ。それは文科省や国会、法律を巻き込んでのものであった。結果は行政フレーズとなっている「八重山は一つ」とはならなかった。このように、失ったものはあったが、得たものもあった。その一つに教科書採択を郡民の身近なものにした|ということだ。

 これまでの採択を見たとき、採択権者の教育委員会はそれほど緊張感を持って当たってきたとは思えない。これに否を唱える歴代教育長は、おそらくいないのではないか。調査員にしても、調査し尽くしたと自信を持って言える者がいただろうか。多数の教科書

を限られた時間で、細部にわたっての調査は困難を極めることは容易に察しはつくが、編集者や執筆者に不満が残らないような調査が求められる。

 教科書採択委員は教科専門家ではない。委員は、学びを深め己の「見識」を頼りに多彩、多岐にわたり検討し合うことを生命線としたい。そのために教科書検討の環境は静謐なものでなければならない。唯我独尊を避けた大いなる調和は、民主主義の基礎的要素だ。それが使命感を高揚させ、論議を尽くした検討、そして採択につながると考える。

■学力向上、その方法でいいか

 県学力向上対策はいびつではないか。発奮とするにはいいが、順位付けに走り過ぎていはしないか。県教育行政の見えとしかいいようがない。ムチを入れる競馬騎手と重なる。

 県教委は、学年末・始休業日にも「補習」と称して学力テスト過去問を各学校に迫った。4月に行われたテスト対策であることは明らかだ。順位付け学力対策は年度ごとに引き継がれ、より濃密度を増していくことが予想される。全国学テ趣旨の軌道からはずれ、その目的を見失うことを恐れる。このことは、やがて「学校での学び」とは何なのかということまで見失ってしまうのではないか。

 人事交流で秋田県から派遣されていた鈴木誠教諭は、終了時にこう話した。「学力を付ける一番の方法は授業。授業の中で学び合い、深い理解力を付けることが大切」。

 付け焼き刃的な過去問対策で学力向上を評価するのは適正とは言えない。せき立てるのではなく静かな環境の中で力を付けさせるべきだ。


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