■連休も順調に増加
今年のゴールデンウイークは日並びが良く国民のおよそ18%となる2300万人余が日帰り旅行を含む国内、海外旅行に出かけたという。
このところの株高や景気の回復基調で前年比3%の増加というが、連休中は八重山にも美崎町などの市街地や港界隈、島々にどっと家族連れの観光客が訪れ、にぎわいをみせた。観光が経済をけん引する当地にとって順調な増加傾向にあることは歓迎したい。
ところで日本における「旅」は伊勢神宮などへの参拝から温泉、健康、癒やしを求める旅などへと広がり、一部の限られた人から多くの人々が楽しむことができるように発展してきた。
道路や港湾、空港など離島の交通体系の整備に伴って日本最南端の八重山にも人口の21倍に当たる112万人の観光客が訪れるようになった。
■観光は国を救う
旅は未知の世界へ誘い、人生を豊かにするだけでなく観光地は消費活動を通して絶大な恩恵を受ける。旅から観光へ発展した歴史は産業化の歴史でもある。「住んでよし、訪れてよし」は観光庁の標語だが少子高齢、人口減少社会を迎えた日本が「まち(島)興し」の切り札として国や自治体を挙げて観光の産業化を図り、観光を通して成長を持続しようとしている。
2020年の東京オリンピックまでに2000万人の訪日観光客を目標とする日本だが諸外国と比較すると現状は厳しいものがある。2013年の実績で世界1位はフランス(8500万人)、2位アメリカ(6976万人)、3位スペイン(6066万人)で、日本は27位の1036万人である。
しかし、昨年はアジアを中心に1341万人に増加、原発事故で原油輸入が急増し、近年悪化していた国際収支は訪日旅行収入の大幅増加で貿易等の赤字分を解消できる見通しという。
まさに「観光が国を救う」のである。
■先進観光地に学べ
八重山の経済規模はおおよそ1100億円、観光消費額は653億円と推計され、60%の域外収入を観光産業が稼いでいる。雇用も同様に郡内2万5000人就労者のうち60%の1万5000人が直接、間接に観光で生計を立てていると推計できる。
現況から単純に計算すれば、観光客150万人を迎えるには6万2500人、200万人では7万人の人口規模が必要ということになる。当然、数を追い求めるばかりでなく観光地として魅力の原点である自然環境保全、文化、体験、交流などの魅力をさらに磨き、国内外の優秀な人材の確保、育成をはじめ、受け入れ態勢を強化し、八重山ならではの国際的観光地に進化させる必要がある。
「百聞は一見にしかず」というが、「井の中の蛙、大海を知らず」して国際標準の受け入れ態勢を築くことはできない。観光が上げ潮にある今、各市町の観光基本計画改定をはじめ、八重山圏域の「百年の大計」を立て直す時にある。
八重山にとって参考になるハワイやバリ島、タヒチ、カリブ海や地中海の島々など先進観光地の実地調査、研究を薦めたい。今こそ旅に出て八重山の未来を語り合う時期に来ている。