■浜下りで魚介類受難
若夏の季節を迎えた。太陽の光が輝き、サンゴの海の彩も鮮やかだ。21日は旧暦3月3日、サニジィである。大干潮のため、浜下りでにぎわいをみせるだろう。
ところで、毎年のように西表石垣国立公園海域公園地区内で禁止されている生物の密漁が後を絶たない。捕獲が禁止されている米原海岸では、カクレクマノミやイソギンチャク、サンゴなどが乱獲されている。石垣市自然保護条例に基づく希少野生動植物保全種と、保護区案を答申した石垣市自然環境保全審議会の委員らは「海岸線を含めた海域の保全は急務。陸と海との問題は一体で、市が保護区の策定も行うべきだ」と述べている。
当然のことである。かつて土地改良によって雨が降るたびに赤土が海上に流れ、朱の海と化した。宮良湾は、いまだに回復しない状態にある。自然を守るということは、海山を一体化してこそ守れるのである。早急に保護対策を立ててほしい。
■海山一体で自然保護対策
やがて、八重山固有種であるヤエヤマボタルの季節を迎える。闇夜に浮かぶ数万匹の蛍川は幻想的である。それも自然環境が曲がりなりにも守られているからだ。しかし、近年は数が減少したのではという指摘もある。こちらも保護対策を考える時期を迎えているだろう。
於茂登岳山頂付近では県の天然記念物に指定されているアサヒナキマダラセセリが産卵を迎える。同セセリは文化財保護条例によって採集禁止し、チョウマニアはそれを順守すべきである。
於茂登岳周辺には、さまざまなトラップが仕掛けられ、多くの昆虫や生物が捕獲されている。文化財や希少野生生物でないからといって無制限に捕獲していいものか。
資料によれば、石垣島や西表島産の昆虫類が高価で売買されているようだ。これでは乱獲するのも当然であろう。しかし、捕りすぎて生態系のバランスを崩してからではもう遅いだろう。
■イリオモテヤマネコと共存共栄
国指定特別天然記念物「イリオモテヤマネコ」発見から50年を迎える。去る15日には「イリオモテヤマネコ発見50周年記念事業委員会」が発足。委員長に就任した川満竹富町長は「イリオモテヤマネコは人類の宝で竹富町のシンボル的存在、世界自然遺産登録への重要なキーワードにもなっている。共存共栄を図りながら、保護保全に取り組んでいきたい」と述べている。
一時期は「人間が大事か、ヤマネコが大事か」という不毛な論議もあった。鶏が襲われ「ヤマネコを殺せ」という物騒な発言も聞かれた。ヤマネコ受難からすると川満町長のヤマネコは「人類の宝」「共存共栄を図る」という発言は隔世の感があり、頼もしい。
ヤマネコは 西表島の原生林に身を潜めているとはいえ、観光客やドライバーが増えるにしたがい、輪禍も絶えない。交通事故対策は急務である。島々で自然の生態系バランスが崩れたら回復に時間を要する。
若夏は生物の恋の季節であり、産卵の時季でもある。人間と自然との関係を見つめる好機にしたい。