石垣島全域を対象とした「国営土地改良事業石垣島地区」が2014年度から始まる。市などが行う関連事業を加えると約760億円の超大型の農業基盤整備事業。施設を改修するほか、北西部地区など土地改良事業が導入されていなかった地域で新たに施設を整備。五つのダムを連結し、島内全域に農業用水が行き渡るようにする。事業は14年度から12年間を予定。内閣府沖縄総合事務局土地改良総合事務所石垣支所の當銘俊明支所長は「効率的な農業を展開できるようになり、フライト農業にもつながる」と事業の意義を強調する。
■農家負担の軽減
今回の国営事業は農家負担が軽減されることが特徴だ。かんがい配水の整備では農家負担は従来の5%からゼロに。区画整理は農家負担は10%から2~4%に減る。いずれも市が負担する。区画整理事業はかんがい施設と併せて行う必要があったが、農地の現況に応じて選択できるようになっている。
ポンプを運転する際の電気代、施設の保守点検・補修など維持管理に充てる農家負担の賦課金も、不公平感を解消する。施設使用の有無に関わらず農地面積に応じて一律に設定されていたが、メーター制を導入。基本使用料に使った分を加えて支払うという仕組みをとる。
■メガソーラー
省エネ対策も特徴の一つ。底原ダム南側突端1・3㌔の平地に太陽光パネルを整備する。発電能力は2000㌔㍗。14年度の着工、15年度の完成を目指す。石垣島初のメガソーラーがお目見えする。これにより、ポンプなどに使う全電力の4割をまかなえるという。
■農家の期待感
新川奈良佐で40年間、サトウキビ作りを行っている専業農家、池原吉剋さん(62)は「水なし農業から脱却するために造った施設が老朽化しており、このままだと後何年もつか分からない。国営事業じゃないと維持できない。国営事業はかんがい配水については行政が負担し、面整備(区画整理)でも農家負担は2~4%。こんないいことはない。早急に整備してもらいたい」と歓迎する。
星野地区で、葉タバコを生産する農業歴10年の砂川拓也さん(33)は「私たちのところは、土地改良事業もなくかんがい配水事業もなかったので、開拓者に敬意を表しながら開拓地を大事に使ってきた。ただ、干ばつで離農するなど営農の難しさがあった。今回、かんがい配水事業が導入されるので、大きな躍進につながると思う。作物は現在、サトウキビが多いが、葉野菜など他の分野にも取り組んでいけるのではないか。地域の将来像をどう描くか、地域一丸となって考えていきたい」と期待する。
■魅力ある農業で後継者を
一方、石垣島最北の地、平野公民館の平良辰男館長(61)は現在、農業を離れている。「平野まで整備されるにはあと10年はかかるだろう。環境が整備されることはいいことだが、農家が高齢化しており、後継者不足。かんがい配水は負担ゼロといっても利用料が発生するので厳しくなるだろうという声もある」と不安を口にし、若者が就業したいと思えるような魅力ある農業の必要性を強調する。
さらに「今のままだと、平久保小学校が廃校になるおそれがある。北部にリゾート施設の整備など活性化策を」とまちづくりに注文をつけた。