国の特別天然記念物に指定され、大自然が残る西表島の象徴ともなっているイリオモテヤマネコ。2013年4月には西表野生生物保護センター(福田真自然保護官)が船浮地区で衰弱していたオスの成獣を保護。約1カ月間、治療を行い、回復後の5月に保護現場付近の林野に放獣した。ヤマネコを保護したのは過去10年間で5例あるが、野生復帰は5年ぶり3回目で同センターでは放獣したヤマネコの追跡調査を行っている。
このヤマネコは4月11日に船浮集落内で発見、保護された。感染症による重度の皮膚疾患で保護から36日間、治療を続け、保護当時の体重2・6㌔から3・6㌔に回復。37日後の5月17日に野生復帰した。
■放獣後に追跡調査
ヤマネコの首には電波発信機が設置されたオレンジ色の首輪がまかれ、同センターでは追跡調査を実施。ヤマネコが5月27日に放獣から10日間ほどかけて船浮地区から5㌔以上南下した鹿川地区にいるのを確認した。
同センターでは6月1日、13日にも海上からラジオメトリー追跡調査で鹿川湾に面した山すそから電波を受信。18日には陸路、「クイラ越え」と呼ばれる峠道から鹿川方面に向かう方向で電波を受信。約2カ月ほどは鹿川湾付近の狭い範囲に滞在していたことを確認した。
9月10日以降は確認できていないが、福田自然保護官は「まだ同じ場所に留まっている可能性もあると思うが、ヤマネコが山間部などに入っていると電波を受信できないため、今後も継続的に調査していきたい」と話し、オレンジ色の首輪を巻いたヤマネコの目撃情報提供を呼びかけている。
■事故防止を
2013年に5年ぶり3回目の野生復帰に成功したイリオモテヤマネコだが、同年は6頭のヤマネコが輪禍に遭い、1頭は逃走したため生死不明となっているが、5頭が死ぬ過去最悪のペースとなり、関係機関では事故防止の徹底を呼びかけている。
事故が相次いだことで10月25日には西表野生生物保護センターと竹富町が「非常事態宣言」を発表。事故防止を徹底した結果、交通事故が最も多いとされる11月中の事故は発生しなかった。
同センターでは町や林野庁、県や関係機関11団体で「イリオモテヤマネコの交通事故発生防止に関する連絡会議」を発足。連携強化と情報共有を図り、県道の見通しを確保するために草刈りやロゴマークを使用した普及啓発活動などヤマネコの事故防止に向けた活動を展開していく。