チョウをはじめとする虫たちと人とが共生できる自然豊かなまちづくりを目指す「首里城下にチョウを翔ばそう会」会長で、宮良出身の大城安弘さん(70)が長年募らせていた思いが実を結びそうだ。今年は同会で「チョウの街宣言」を行い、チョウに親しむ団体や愛好家によるサミットも計画する。大城さんが描く青写真は、本島のどこにでもチョウが舞う「バタフライアイランド」。さらにその先には、故郷の石垣島をはじめとした八重山全体にも未来図を広げていきたい考えだ。
■チョウの楽園は人の楽園
「首里城下にチョウを翔ばそう会」で大城さんは2代目の会長を務めている。「チョウの楽園は人の楽園」を合言葉に、2001年の結成から今年で13年目を迎えた。
現在は約200人の会員を抱え、チョウなどの昆虫、小動物の生育に適した環境整備に向けた食草や蜜源植物の植栽、学校への出前授業、講演会などの活動を長く続けている。
「バタフライアイランド」は、同会が描く構想の一つ。「チョウが育つ環境は、人にとっても良い環境。観光資源にもなる。どこに行ってもチョウが飛んでいる。そんな島にしたい」と大城さんは思いをはせている。
団体名称にある「首里城下」は、首里の町に限定したものではなく、かつての琉球王国統治下にあった琉球列島全体を指し、奄美から先島も含む。
展望には「まずは沖縄で実現させて、石垣や西表など固有種が多くいる離島にも広げたい」と熱を込める。
■黒いオオゴマダラ
石垣市のチョウにも指定されているオオゴマダラは、白と黒のまだら模様で知られる。昨年9月には、那覇市で羽の9割以上が黒い個体が発見され、世界初とみられる交尾を大城さんが確認した。
県内外で話題になった黒いオオゴマダラは、大城さんの知人が発見し、大城さんが譲り受けて自宅で飼育していた。通常の個体は、ふ化から交尾まで1週間。しかし、黒い個体は3週間以上もかかったという。
「突然変異個体で同じ仲間として認識されなかったのではないか」と分析する大城さん。現在も遺伝の法則に照らし合わせながら黒い個体の子孫を飼育し、生態を調べている。
過去には新種のコオロギ20種以上を発見した経験もある。昆虫全般に精通しているが、オオゴマダラには「普通のチョウはせかせかしているが、オオゴマダラはゆったりとしていて眺めているだけで楽しい。ゆったりとした動きが癒やし、安らぎを与えてくれる」と特別な思いを抱く。
■今年は忙しい1年に
昨年は、那覇市指定のチョウにオオゴマダラが内定した。大城さんも選定に尽力した一人で、これまでの活動が奏功して今年初めごろにも正式に決定される。
さらには、那覇市のチョウ指定に伴う式典も開催して「チョウの街宣言」も行う予定だ。大城さんはこれを弾みにサミットにもつなげたい考えで、忙しい1年になりそうだ。
構想実現には、自治体である市町村、そしてチョウの愛好家や団体の連携した取り組みが必要だと強調する大城さん。
自治体に関しては、石垣市、竹富町を含む7市町村がそれぞれ独自のチョウをシンボルとして既に指定している。チョウに親しむ団体も同会を含めて県内各地にあり、地盤は固まりつつある。
これに加え、沖縄県の顔である那覇市がチョウを指定する意義は大きく、構想実現の起爆剤にもなりそうだ。
■チョウに携わる毎日
大城さんは、宮良小、大浜中、八重農を経て、琉球大学と鹿児島大学大学院で昆虫について学びながら農学博士に。その後は、沖縄総合事務局に勤めながら、沖縄女子短期大学で昆虫学を教えた。
現在は、那覇市に住みながら同会会長だけでなく、専門学校で昆虫学や自然科学の講師も務める。
さらには、那覇市が地元のシルバー人材センターに管理を委託している「ちょうちょガーデン」管理人の一人として、チョウに携わる毎日を送っている。