■入国審査緩和で滞在時間増
大型客船で台湾−石垣間を運航するスタークルーズ社(本社マレーシア)の「アクエリアス号」(5万1309㌧)が16日、今年初めて石垣港に寄港し、2015年のクルーズ観光がスタートした。1997年3月に台湾から初寄港以来、毎年好調に推移する八重山のクルーズ観光は、今年さらに寄港回数が増え、定期的に運航するスタークルーズ社は今年3月から12月30日までの日程で前年を28回も上回る過去最多の87回の寄港を計画している。
しかも今年からクルーズ船客に対しては、「船舶観光上陸許可制度」が適用され、旅客らから不満があった入国審査時間は顔写真撮影免除などで約半分に短縮。その結果石垣での滞在時間は約1時間も増えることになり、観光業界はこれによりさらに消費額が増え誘客増につながると期待している。
一方で通訳や両替所などの受け入れ態勢も着実に整備されてきたが、まだまだ課題も多い。特に南ぬ浜町で計画されるクルーズ専用バースと新ターミナルビルは受け入れ態勢の根本をなすものであり、急ぎ整備を進めたい。既存のターミナルも急ぎ改修すべきだ。
■石垣は毎年全国上位
初寄港から18年目を迎える八重山は今や全国屈指のクルーズ観光地に急成長。過去5年の石垣港への寄港は2010年が45回で全国4位、11年が42回で1位、12年46回で4位、13年59回で1位、14年69回で3位という実績だ。ちなみに石垣と上位を争うのは博多、長崎、横浜、神戸、那覇の各港だ。
一度に1400人前後が訪れ、日帰りで5~6時間滞在するクルーズ船の台湾人観光客らに対しては、当初言語や文化の違いから戸惑いがあり、地元の飲食店や土産店などの対応はそれほど積極的でなかった。それが今ではその経済効果が大きく石垣市、同観光交流協会、バス、タクシー、レンタカーなど関係8団体で受け入れ連絡協議会ができるほどに大切なお客さんだ。
クルーズ観光は、国も豪華客船で中国など世界の富裕層が来れば各港の地域経済が活性化するとして、東京オリンピックまでに現在の17万人を100万人に増やすため港の整備を進める一方、上陸許可などの入国審査を緩和。県も誘致関連に14年度は約1億2000万円を計上するなど力を入れている。
■いかに経済効果を高めるか
確かに短い滞在時間だが、食べる、買う、観光するクルーズ観光の経済効果は大きく、受け入れ地としていかにこれら外国人観光客のニーズに応え、そして満足させることができるかが、今後クルーズ観光をさらに増やし、経済効果を高めるかの大きな課題だ。
南ぬ浜町で整備される7万㌧級と14万㌧級のクルーズ船専用バースのうち7万㌧級バースと新ターミナルビルは18年度の完成を目指すが、1年でも早く前倒しで完成して快適な施設で内外の観光客を迎えるようにしたい。
そのためにも屋根つき歩道で障がい者にも優しいバリアフリーの新ターミナルビルを建設。一方でニーズ調査もして外国人が満足する食べ物、買い物、観光の提供や情報を発信。さらにクルーズ船を一泊させるような充実した離島周遊プランも提供し、八重山を外国人にも魅力ある観光地にしたい。