夢を追いかけ、周りに夢を与える人だった▼先日亡くなった本永一雄さんは、離島では難しいと言われた紳士洋品店「東亜通商」を開き、店名に違わず時代をさきがけ島の流通と広告に革新を起こした▼開店は大川。広告は常に扇動的で、お買い上げ抽選景品に那覇・石垣往復航空券を登場させ読者を驚かせた。新栄町移転後も台湾、ハワイ旅行とエスカレートし近年はジャンボ宝くじ券に至った。そんな商売で一時期、単独店の売り上げ沖縄一、九州地区でも指折りの繁盛店として知られた▼縁あって新聞広告を担当した。本永さんの広告に対する姿勢は厳しく、広告は早朝から読者の元に出かけていく店の営業部長だと話し、金には糸目をつけなかった。しかし何日も想を練ったという原稿通りに仕上がらないとそれこそ延々と広告について説教された▼石垣にもカラー新聞の時代が来るぞという本永さんの話などに触発され弊紙もいち早くカラー輪転機を導入した。設備更新をしたものの当初カラーは東亜通商以外の利用は少なく、店で思わず嘆息を漏らしたら、歳末大売り出しの連続カラー大広告を奮発してくれた▼本永さんは長風呂好きで、原稿を待たされている間に冷房で体が冷え鼻水をすすっていると風邪薬をくださった。よく効いたので常備薬にしている。合掌。（仲間清隆）
↧