予期せぬ突然の死。これから喜怒哀楽を共に楽しい人生になるはずが、未来を断ち切られた無念さを思うと、何とも悲しく痛ましい▼川崎市の多摩川河川敷で、中学1年の上村遼太君(13)が18歳の少年に刃物で殺害された事件が社会に大きな衝撃を与えている▼上村君は、バスケットが好きで明るく元気な人気者だったという。昨年夏ごろから部活を休むことが続き、今年に入ると学校にも来なくなった。そして行動していた年上グループからたびたび暴力を受けるようになり、親しかった友人に「殺されるかもしれない」と打ち明けていたことが分かっている▼殺害される前日の夜の食事で「食べる?」と母親にパンを差し出したのが最後の会話となった。母親は「事件の日の夜、外に出かけようとするのをもっともっと強く止めていれば、こんなことにはならなかった」と悔やんでいる▼今回の事件は、その年ごろの息子・娘を持つ家庭には大変なショックだったろう。「わが家は大丈夫」と言い切れる父親はどのくらいいるのだろうか。それほど多くないのではないか▼上村君の異変のサインをなぜ周囲は受け止められなかったのか。家にも教室にも自分の居場所がないと感じている子どもたちがいる。このことを私たち自身が深刻に受け止めるべきだろう。家庭を振り返ろう。(鬚川修)
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