【与那国】各地に掲げられていたのぼり旗や横断幕が外され、観光客らを乗せた与那国馬が何事もなかったかのように町内をゆっくり歩く。賛成多数となった陸上自衛隊沿岸監視部隊配備の是非を問う22日の住民投票から一夜明けた与那国島。一見、普段ののどかな風景を取り戻したが、賛成、反対に二分された住民には対立の感情が残る。「人が増える」「島を離れようか」−。賛成派は歓迎ムード一色に包まれ、反対派は苦悩の色を濃くした。
住民投票の結果、外間守吉町長や防衛省は民意をもって確実に配備計画を推進することになる。
20代の自営業男性は「自衛隊が入ってくることで人が増え、お客も増える」と大歓迎、観光関連業の40代男性も「南牧場の景観が失われることは残念だが、ダイビングや海底遺跡、フィッシングなど、まだいろんな観光資源がある。自衛隊配備と観光の両方で島の活性化を図ればいい」と前向きだ。
陸自基地建設の着工前は、配備に賛成するか反対するか迷っていたという60代の主婦は「すでに工事が始まっており、もう後戻りできない」と決断。「普段はみんな仲がいい。今後は、賛成・反対のわだかまりがなくなってほしい」と町民の融和を呼びかけるが、反対した人が自衛隊を受け入れるのは容易ではない。
70代の女性は「電磁波の健康被害や標的となる危険性のある島に家族を連れてくる自衛隊員がいるのか」と隊員の家族も引っ越して来るという話に首をかしげる。
幼児を抱える30代の女性は「基地建設に賛成多数となったことで、レーダー基地も建設される。子どもの健康への影響を考えると島を離れるべきか悩む」と声を落とした。
南牧場では、この日も陸自基地用地となる土地の造成工事が行われた。
沖縄防衛局地方協力確保室の千田秀雄室長は「住民投票の結果を受け、特別に何かをするということはない。2015年度末の配備に向け、これまで通り、地域に理解を求め、丁寧に対応していくだけ」と淡々と語った。