■スカイマーク社撤退は打撃
昨年の八重山観光入域者数は前年比18・9%増の112万人余となり、2年連続で過去最多となった。観光消費額はクルーズ船が宿泊を伴わない日帰り観光であることから伸び率は若干低い653億円(前年比12.5%増)となったが過去最高を記録した。
新石垣空港開港を機に第三極のスカイマーク社が低価格で参入したことによって、高価格帯に硬直していた運賃体系が崩れ、劇的に低減したことが八重山観光と地域経済に強い追い風となり、同社の功績は大きいものがある。
航空運賃低減問題は離島住民の長年のテーマで、行政や議会、関係団体が要請活動を繰り返したもののハードルが高く、実現が困難であったが、新空港開港で3社競争となり、あっさり実現できたことは、航空自由化・規制緩和の成果であるが、予期せぬスカイマーク社の経営破綻により石垣路線から撤退し、従来の高い運賃に逆戻りして、リーディング産業である観光や市民生活、地域経済に大きな打撃を与えることが強く懸念されている。
■現行料金でも利益?
航空運賃にはユニットコストという指標があり、旅客1人当たり、1㌔㍍の輸送原価、経費を指すが、JALグループが11円、ANAグループは13円、LCCは8円以下という。那覇までの距離はおよそ400㌔なので、スカイマーク社の片道5000円は理にかなっていて稼働率が確保できれば十分採算のとれる運賃だ。
沖縄県内にはJRがなく、その恩恵を受けていないが、那覇までの距離を比較すると、普通料金(正規料金)は2万5800円、離島住民割引料金は1万6850円である。東京駅から岐阜羽島駅(396㌔)までの新幹線料金は1万580円で、石垣=東京(約2000㌔)の航空運賃が6万6690円、新幹線で(盛岡=鹿児島、2002㌔)4万3560円となる。
陸路と空路で輸送形態が異なるが、いつでも乗れる普通旅客運賃はJRがいかに安いかが分かる。日本国民として、離島住民であっても憲法で言う格差のない平等主義の原則を考えるとき、都市住民だけがJRの恩恵を受ける現状はいかがなものか。離島住民にも公平な経済性、利便性の確保ができなければ均衡のとれた国の発展はおろか、国境離島の衰退を招き、国家が守れない。また、最近叫ばれている「地方創生」にも大きな疑問符が付くと言わざるを得ない。
■国や県との連携が重要
八重山経済人会議が強い危機感でいち早くスカイマーク問題に反応し、石垣市や市議会に現行運賃の継続を求める要請活動を行い、先島市町村会(宮古・八重山5市町村)も既存航空会社に低減運賃継続の要請活動を行った。
運賃問題は航空自由化と相まって、原則自由で届け出制となっており、権限が及ばないとする点もあるが、国や県の指導力が発揮される場面であり、連携を図る必要がある。第三極のスカイマーク社存続と路線復活は、国策として、取り組むべき課題だろう。
八重山が経済的に自立し、持続的な発展を目指すため、地域の総合力が今、まさに試されている。