■日本人もテロの標的に
イスラム過激派の魔の手はついに日本人にまで及び、残虐非道にもジャーナリストら2人の命が奪われた。しかも過激派組織のイスラム国は安倍首相を名指しして、「これからは日本人もテロの標的になる」と公言した。
これに対し安倍首相は、自らのイスラエルでの発言がテロを誘発したのではないかとされつつも、「罪は償わせる」と強弁。憲法9条改正で邦人救出や米軍など他国軍の支援のため自衛隊の任務を拡大して海外派遣を随時可能とする恒久法制定など「戦争する国」へますます前のめりになっている。
このように国が危うい方向に進む中与那国町では、陸上自衛隊沿岸監視部隊配備への賛否を問う22日の住民投票まであと10日に迫った。既に工事は昨年4月から始まっているが、反対派にすれば住民投票で反対の民意を示せれば、今からでも自衛隊配備にブレーキを掛けられる可能性も見えてくる。それだけに約40人の中学生を含む1280人余の有権者には後世に禍根を残さぬ慎重な判断が求められる。
しかも与那国町の結果は、同様に自衛隊配備への調査費が計上されている石垣市にも連動し、八重山全体を弾道ミサイルも備えた軍事基地化することにつながる。与那国町民にはそういう状況を見据えた判断も求められる。
■自衛隊配備に230億円の巨費
それにしても与那国町への自衛隊配備にはどうしても理不尽さをぬぐえない。来年3月の完成を目指す自衛隊基地建設は、2011年度の3000万円の調査費に始まって12年度に用地取得費などに10億円、13年度が駐屯地造成工事などに62億円、14年度が沿岸監視装置取得や庁舎建設などに155億円、そして15年度は隊員の宿舎建設などに2億円を概算要求しており、その総額は約230億円に上るほか維持費が発生する。
外間守吉町長が自衛隊誘致にかじを切ったのは、自らの力量不足も否めないが、島の過疎化に歯止めがきかず、さらに過去に活性化のため台湾との交易など自立ビジョンを策定。国に支援を訴えたが、それも全く無視されて追い詰められたことが大きな要因だ。
いわば国の国境離島政策の弱さで町が疲弊しているのに、それを顧みずに多くの住民が反対する自衛隊基地建設には巨額の国費を投入というのは理不尽であり、辺野古もそうだが離島にまで基地を押し付ける軍事優先の国の差別扱いに、しっかり民意を示したい。
■自衛隊が島の未来も左右?
昨年の敬老の日に知事表彰を受けた新百歳の市内の女性が、「一番うれしかったことは戦争が終わったこと。戦争は怖い。戦争してもらいたくない」とあえて若い記者たちに向かって語っていたというが、基地建設を認めるということは安倍首相が進めるその再び怖い戦争への道に加担し、そしてそこに軍隊があるということは戦争もテロもよそ事でなくなるということだ。
さらに自衛隊に反対する候補者は配備後は町長になれないなど、家族を含めた約200人の隊員の存在は町の未来を左右し、島が自衛隊に支配されかねない危うさも抱えることになる。
観光客でにぎわう八重山には、戦争につながるものは一切ほしくない。