■スカイマークが撤退へ
経営破たんによるスカイマーク(SKY)の撤退は、予想以上に郡民に不安と動揺を広げている。それは28日に突然同社が民事再生法適用を申請し、翌29日に宮古、石垣からの撤退が発表されると即座に郡民や観光業界から、「スカイマークが撤退すると既存の航空会社が運賃を引き上げないか心配」「航空運賃が上がると今の好調な観光にブレーキをかけ、ようやく持ち直してきた八重山経済がまた落ち込む」の反応があったことで明白だ。
そこには過去に宮古で同社が一時運休した際、既存の航空会社がほぼ元の運賃に引き上げたことがあったため、撤退すると現在の低価格路線が同じように再び元の高価格路線に戻るという根強い不安が郡民や観光業界にある。
スカイマークは3月29日から完全撤退する。これに対し既存航空会社の日本トランスオーシャン航空(JTA)と全日本空輸(ANA)がどう対応するかだが、両社には2008年のリーマンショックや11年の東日本大震災以降の不況からようやく抜け出し、好調さを取り戻した八重山観光と経済に水を差さない配慮をぜひお願いしたい。
■高額航空運賃に「風穴」
「元祖格安航空」のスカイマークが宮古、八重山の観光や経済活性化に果たした役割は顕著だ。低価格な運賃体系を前面に11年9月宮古、13年7月には新空港が開港した石垣に新規参入し、それまでの割高な航空運賃体系に「風穴」を開け、それに加えてピーチなどの格安航空も新たに参入し業界に価格破壊をもたらした。
航空各社の価格競争の結果、那覇—石垣の運賃は購入日などによってさまざまに幅があるものの、現在通常片道2万5000円が最安で4000円から9900円。さらに東京—石垣も通常片道6万6000円が同様に航空各社や購入日などで幅があるものの、ホテルパックで1万4000円などと格安になった。
その安い航空運賃が八重山に112万人というかつてない観光客を呼び込み、さらに地元の人々を「運賃が安いので那覇の子どもたちや友人にも気軽に会えるようになった」と喜ばせた。
■運賃引き上げは慎重に
それが突然のSKYの撤退発表でその好調な観光と八重山経済、それに離島住民の唯一の足に「運賃値上げ」という暗雲が垂れ込めることになった。
それは13年にSKYが4月から6月まで運休したさい、既存の航空会社が価格競争で引き下げた那覇—宮古片道4、5000円の運賃を一気に1万7000円台に戻したことがあるためだ。
既存の航空会社側にすれば「現在の運賃は適正でない」が、観光客など利用者からすればそれが適正だから利用が増えているといえる。それをあくまで利益優先の企業の論理で地域の実情や経済情勢も無視して値上げを強行すれば、今の好調な観光や経済の足を引っ張り、住民生活への影響は必至であり、当然反発が出てくるだろう。
JTAの昨年の3月期や9月期決算は宮古、八重山の価格競争で旅客単価が落ち込み、その分当然のことながら収入は減少したという。しかしそれでも引き上げには地域経済や住民の暮らしに配慮があってしかるべきだ。