日本最大級の電気推進式遊覧船「Vibes one(ヴァイブス ワン)」(19㌧、定員34人)がこのほど完成し、石垣港に入港した。バンダイナムコグループの㈱VIBE(本田耕一代表・東京都)が県の補助事業を活用して建造したもので、同社は3月末まで試験運航を行った後、石垣市や地元業者と連携して電気推進船の快適性を活用した新たな観光メニューの開発を手がけていく考えだ。
同船は、同社と県内2社が共同で県の一括交付金事業を受け、離島での陸上電源基地・EV船を活用した自立型地域エネルギー基盤の研究開発として建造した。双胴船で、船体はアルミ合金製。全長19.99㍍、幅6㍍。電気推進部はリチウムイオン電池120㌔ワット時、モーター(55㌔ワット)の2機。フル充電時には巡航速度8ノットで継続して2時間(約30㌔㍍)の航行が可能という。
同研究では3月までに、石垣港離島ターミナルに、30㌔ワット時の太陽光パネルと150㌔ワットのバッテリーなどの陸上電源基地を整備する。
建造費と電源基地整備費を合わせた総事業費は約5億5000万円。
遊覧船の運航は、㈱トムソーヤ(宮里安一代表)に委託して行う。4月以降、地元業者と連携して同船の運用を行う法人を設立する予定だ。
本田社長は「EV船の普及と電力基地の整備を含めて石垣島の観光PRにつなげていきたい」と話し、同研究開発のトータルアドバイザーを務めた東海大学海洋学部の山田吉彦教授は「繊維強化プラスチック(FRP)製だと離島では処理できないためアルミ製にこだわった。電気推進船で環境に優しく、離島に電源基地を整備していくことは台風災害時における電源確保にもつながるのではないか」と期待する。
13日午後、中山義隆石垣市長が同船に体験乗船、「EV船なのでエンジン音も排ガスの匂いもなく、振動も少なくて快適に乗ることができた。新たな着地型観光メニューの一つになることを期待している」と話した。