■町民不在の政争はやめよ
与那国島への陸上自衛隊沿岸監視部隊配備の賛否を問う住民投票が、来月にもようやく実施される見通しとなった。去る8日の与那国町臨時議会で住民投票条例の不備を修正する改正案が野党の賛成多数で可決されたためだ。あらためて今週15日に臨時議会を開いて投票日程が決まるが、しかしまだ不確定要素は残っている。
外間守吉町長もようやく実施の意向だが、一方で依然中学生や永住外国人の投票を疑問視し、加えて投票率50%以下の住民投票不成立を盛り込んだ修正案を提案する意向も示しているため同問題をめぐって対立の結果、町長が再議という拒否権を発動すればご破算になる恐れもあるからだ。
与那国町が自衛隊に支配される恐れもある問題だけに、たとえ工事は既に始まっていても、町民が自衛隊配備にどういうスタンスだったのかの民意は明確に示されるべきだ。それを町長と野党の対立という町民不在の政争でご破算にするのは許されない。互いに歩み寄って住民意思を問うべきだ。
■工事は結果出るまで中止すべき
その上で外間町長は民意に沿って賛成が多数なら堂々と配備を推進、反対が多数なら配備中止を国に求めるべきだ。それが住民投票の目的であり、従って防衛省も住民投票の結果が出るまでは工事を中止すべきだ。
昨年4月から造成工事が進んでいる駐屯地建設に至る国と町のやり方は、強引で丁寧さを欠いたものだった。
2009年に外間町長が「過疎対策と活性化」を目的に防衛省に誘致要請して始まった自衛隊配備計画。11年に反対派が賛成を上回る署名を町に提出し、さらに翌12年には、町内有権者の45%に当たる544人の有効署名で住民投票を請求したが、同年9月の町議会で4対2の多数与党に否決され、反対住民の声は完全に無視された。
当時町長や与党議員らは「自衛隊誘致を掲げた町長が当選したことで既に民意は出ている」として配備を推進。そして防衛省は町有地の南牧場の補償額を高額につり上げてやみくもに借地契約するなどして昨年4月、反対住民の怒号の中、起工式を強行した。
■国と町は説明会も開催せよ
こうした強引な手法を一変させたのが昨年9月の町議選。与野党が3対3の同数となり、議長を与党が取って野党多数となったことから、自衛隊基地関連予算や基地建設予定地内の町道廃止案を次々否決。そして今回の一連の住民投票条例可決となった。
ただその条例にも投票がすべて無効になる文言の不備があることがわかりその修正をめぐり町長と野党が激しく対立を続けたが、去る8日の臨時議会で不備がようやく修正された。
15日の臨時議会で日程が決まれば、12年の直接請求から3年目にしてようやく住民投票が実現することになる。 自衛隊配備には監視レーダーの電磁波による人体への影響などが懸念されており、さらに自衛隊は機密事項が多く、今後基地がさらに増強されることなどへの町民の疑問や不信は根強い。それだけに防衛省と町は住民投票前に住民説明会も開き、これまでのような強引で乱暴な手法はやめるべきだ。