■東北と沖縄に設立を提言
日本学術会議は昨年2月、動植物やそれらの化石、岩石などの標本を収集・保存し、自然環境を総合的に研究する拠点となる「国立自然史博物館」を東北と沖縄に設立する構想をまとめ、同11月までに国などに重要計画を推奨する「第22期大型施設・大規模研究マスタープラン」に盛り込んだ。
これを受けて沖縄側は、さっそく昨年12月6日、那覇市内で琉大や沖縄美ら島財団、沖縄生物学会など県内の学術団体がシンポジウム「沖縄に国立自然史博物館を」(県後援)を開き、「ちゅら島の豊かな自然を未来につなぐ」と沖縄の最適性をアピールした。
そこで沖縄での設立が実現するとしてそれでは県内のどこにするかだが、ぜひ八重山で設置してほしいと願う。それは八重山群島も生物の多様性が豊富なことから、現在奄美群島や沖縄本島北部地域とともに八重山も西表島の世界自然遺産登録に向けて申請準備が具体的に進み、さらに石垣市では築40年余の博物館建て替えで地方の自然史博物館である「新八重山博物館」建設構想が動きだしているからだ。
■石垣市で有志が誘致に動く
市内では既に民間の有志が昨年12月のシンポジウムに参加するなど水面下で誘致に動き、さらに中山義隆市長も出張の公務の合間に短時間だが同シンポに参加し、石垣をアピールした。
日本学術会議はこのほかにも同じく世界のサンゴ礁域の生物標本などを収集・展示し、その生物多様性を研究する「国際珊瑚礁域生物多様性研究センター」も沖縄での設置を提言しているという。八重山は世界的な「白保のサンゴ」で既に周知のように“サンゴの宝庫”であり、市長や民間の有志らは併せて同センターもぜひ誘致に名乗りを上げてもらいたい。
同構想は世界的に生物多様性が重要度を増す中、日本では拠点となる施設が「国立科学博物館」しかないのに加え、東日本大震災で岩手など東北の博物館が被災して貴重な標本数万点が失われたことを教訓に、国内施設の機能拡充と施設の分散配置の必要性から、東北は復興のシンボルとして同構想が検討され、併せて生物多様性の高い沖縄も候補地に浮上したとされる。
計画では施設面、研究機能面でアジアと世界を先導する博物館を目指すとしており、内閣府の特別の機関と位置づけられる権威ある日本学術会議の提言だけに、実現の可能性は高い。
■新たな観光スポットに
石垣市では現在、新博物館と水族館のほかに水面下で一部有志らにより国設のプラネタリウム構想が進められているが、いずれも巨額の建設費がかかる上に新市庁舎建設との兼ね合いで見通しは厳しいというのが現状。
それだけに国立自然史博物館が誘致できると、これらがすべて一挙に実現の可能性が広がる。
欧米にはそれぞれ国立自然史博物館があり国際研究拠点となっているが、同時に国を代表する大きな観光スポットにもなっている。八重山も新たな観光スポットとして、さらに国際研究や地域の教育機関としての機能も期待される。安倍首相の「地方創生」に合わせ、ぜひ誘致運動を進めたい。