自閉症の仲松幸清さん(43)=石垣市新川=の初めての個展「スエーデン刺繍作品展」が24日から、石垣市新川の「ボンヌシャンス」で開かれ、来場者の注目を集めている。幸清さんがこれまでに作ったテーブルセンターなど約30点を展示しており、母親の芳子さん(68)は「10年の集大成として開いた。一目一目の積み重ねがちゃんとした作品になっていくのを皆さんに見ていただきたい」と呼びかけている。来年2月1日まで。
スエーデン刺繍は布目を数えながら布をすくうのが特徴。芳子さんは「こだわりの強い自閉症には向いている」と話す。
幸清さんは東京都世田谷区で生まれ、3歳のころ、知的障がいを伴う自閉症と診断された。12歳の時に芳子さんが「これならできるのではないか」と針と糸を持たせたのが刺しゅうを始めたきっかけ。芳子さんも初めてだったが、教えながら二人三脚で取り組んで来た。
18歳からは家でほそぼそと取り組む程度だったが、33歳で、芳子さんの古里の石垣島に来たときに再スタートを切った。
作品にもよるが、最初は一つの作品に1カ月かかっていたのが今は5、6時間でできるようになったという。 今年は幸清さんが通う八重山育成園を運営している若夏会が創立25周年を迎え、幸清さんが記念品を作り、提供も行った。
作品展では、テーブルセンターやピアノカバー、タペストリーなど約30点を展示。中でもピアノと鍵盤カバーのセットは1日に開かれた「第33回障がい者週間市民のつどい」の第1回八重山地区障がい者美術展で、石垣島トラベルセンター賞に輝いた力作。
24日午前、見学に訪れた吉川英治さん(69)は「糸の引っ張り具合にも技術が出ている。作品にかける思いや集中力があってこそなせる技だ」と称賛。妻の孝子さん(68)は芳子さんとは同い年で思い入れも強いといい、「子どもの秀でた才能を引き出し、伸ばしている。本当に素晴らしい」とたたえた。
育成園で幸清さんの活動に携わっている職員は「興味を持つ利用者が出てきたし、コミュニケーションのきっかけづくりにもなった」と話す。
芳子さんは「自閉症の人には入りやすい刺しゅうで、一緒にできる人がいたらと思う」と期待している。
同展は午前10時30分から午後6時まで。毎週月曜日と第3日曜日は定休。30日から来年1月3日までは年末年始で休み。