年の瀬、米田穣東大教授の次の言葉が胸に染みる▼白保の竿根田原洞穴から出土した17点の人骨、木炭、動物の骨などを厳密に年代測定した結果▼「石垣島には約2万8000年前から人が住み、白保の洞穴は1万5000年間使われていた可能性がある。採集や狩猟の範囲が限られ、津波などの自然災害のリスクもある小さな島の洞穴が1万5000年も使用され続けられた例は世界でも珍しい。何か私たちが知らない生きる仕組みがあったかも知れない」▼そうだ、それは確実にあったのだ。まずそれは現代の人類の生き方とは全く反対であっただろう。他を支配しようとしたり、欲望を追い富をただむさぼり続けようとする生活が1万年も持つわけがない。この先人たちは賢明で観察力に優れ、己の置かれた位置、環境を熟知し、それに合わせて自らをよく統御自制し、そして生きている純粋な喜びを日々細やかに感受していたに違いない▼現代の言葉に表現すれば、平和、慈しみ、知慧、清浄、そしていのちの自覚。つまり現代生活において軽視されつつある言葉の実質に満ち満ちていたのだ▼このようなメッセージを残してくれたことは、今は白骨となっている先人たちの誠に大きなプレゼントであり、そしてそれは、現代への鋭い批判でもあるのだ。(八重洋一郎)
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