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問われる「祭祀」のあり方

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■神司誕生、結願祭、旗頭復活

 今年は司(つかさ)が誕生したり、石垣、宮良の結願や12年ぶりに平得の結願が開催された。石垣では幻と言われた「みょうら旗頭」が約1世紀ぶりによみがえり、宮良では123年ぶりに「旭日綿花」の旗頭を復元。平得では弥勒の面が新調されるなど祭祀(さいし)への関心が高まっている。

 川平では去る10日に赤色目宮鳥御嶽(あーらおん)の司が誕生した。後継者は先代から年間、20余の神行事の神口(カンフチィ)や祭祀に関することがらが伝授され、カンスデ(神司誕生)の祝がなされる。3日2晩、夜ごもりし、不眠不休や絶食、さらに、1週間、御嶽に通い神事に関する復唱修行を行うという。「神の妻」に召された司は永年修行を積み神祝(カンヨイ)への厳しい道を歩んでいく。

 八重山文化は農耕文化である。農耕文化の中心をなすのは、御嶽信仰である。御嶽に鎮座する神々へ仕える司は八重山文化を支える重要な人たちである。若い司の誕生は、氏子や集落だけでなく、八重山の祭祀や神事、伝統文化にとって喜ばしいことだ。

■「四ケ村のプーリィ」を舞台化

 14日に国立劇場おきなわで「石垣島四ケ村のプーリィ」が公演される。国立劇場によれば「各字にある御嶽で行われる感謝儀礼のオンプールと字新川にある真乙姥御嶽で行われる、翌年の豊年を願う予祝儀礼のムラプールを舞台で上演し、それぞれの字の持ち味をいかした活気あふれる豊年祭を楽しみに」とある。

 演目は道太鼓(大川)、ミシャグパーシィ(石垣)、スナイ(新川)、巻踊り(登野城)、五穀種子の授けの儀(新川)、アヒャー綱(新川)、棒(大川)、獅子(登野城)、ツナヌミン(新川)である。旗頭、ガーリ、ツナヌミン、大綱曳きは劇場前広場で行われるという。

 プーリィは粟稲の収穫を神に感謝し、来年の豊作を予祝する祭祀である。村人は神饌を供え、ウフクムチ(大供物)といわれる旗頭や芸能を奉納し、来夏世の豊作を祈願するのである。それゆえ祭祀は神事である。しかし近年その傾向が強い。それでも宮良、その他に伝わるアカマター祭祀は外来者に厳しい制限をしてかたくなに伝統を守っているが、他の地域では観光化の感はいなめない。

 川平の節祭では、かつて真世加那志(マーユンガナシィ)が闇の中で神口(カンフチィ)を唱えている最中、酔った観光客が蛮声をあげたり、フラッシュをたいたり、車両がクラクションを鳴らし、ライトを照らすなどマナーの悪さが問題視された。神を迎える夜は静かでありたいものだ。

■観光化する祭祀

 文化はそれぞれの地域の人々の、歴史的、地理的空間のなかでつくられた生活様式や価値観であり、精神である。それが、近年、観光文化と言うことばに象徴されるように文化が軽視されゆがめられつつある。

 国が地域伝統芸能を観光に活用する「地域伝統芸能等を活用した行事の実施による観光及び特定地域商工業の振興に関する法律」の影響もあろう。

 国立劇場の「四ケ村のプーリィ」を県民に広く紹介したいという企画や「各字の持ち味を生かした活気あふれる」という意気込みも買うが、プーリィ本来の精神からはほど遠く、神事や祭祀芸能の観光化ではないかと危惧する。

 国立劇場おきなわでの「四ケ村のプーリィ」公演は、地域の文化(精神)とは何か、神事・祭祀芸能を舞台化する問題も含めてそのあり方が問われている。


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