■強権の「安倍政治」を問う
第47回衆院選が2日公示され、14日投開票の12日間の戦いがスタートした。1票の格差是正のため小選挙区は5議席減の295、比例代表は180の計475議席に9党から1100人余が立候補した今回の総選挙は、自公連立の「安倍政治」を問うものだ。
安倍首相は今回の選挙に際し、経済政策のアベノミクスで株価が上がり、賃金も上がり、雇用も増えたと実績を強調。その上で「私たちが勝ち抜けば来年も再来年も賃金が上がり、確実に景気は地方にも及ぶ」とアベノミクス継続でデフレ脱却に支持を求める。
しかし安倍政治を振り返ると、国民世論や民意を無視する強引な手法の安保政策や経済政策に正直不安と懸念を感じる。それはまず第1次政権では野党の反対を押し切って国民投票法を制定して憲法改正に道を開き、さらに教育基本法に愛国心も盛り込んだこと。
第2次政権では対中・韓関係をますます悪化させる靖国参拝を強行。さらに知識人らから希代の悪法と呼ばれる特定秘密保護法を制定。最悪は憲法の解釈変更で集団的自衛権行使を容認。「戦争する国」に道を開いたことだ。
■ますます拡大する格差社会
経済政策も確かに投資家は株でもうけ、大企業の労働者も賃金は上がったが、雇用は増えたといっても実態は非正規雇用が増えただけで実質賃金は下がり、逆に物価は上がり、大多数の労働者や地方の人々の生活はむしろ苦しくなっているというのが実情だ。
それだけに安倍政権が現在の一強多弱で継続となると、連立の公明もブレーキ役になりきれていないし、再び暴走に拍車がかかり、年明けの国会で審議される集団的自衛権行使容認の関連法改正や日米防衛協力指針(ガイドライン)の改定は強行され、「戦争する国」に大きく踏み出すことになる。
雇用も労働者派遣法改正案で労働者の使い捨てに歯止めがきかなくなり、「子どもの貧困」「貧困の連鎖」の格差はますます拡大の懸念が強まる。
さらに消費税は1年半後には、定数削減など身を切る改革がないまま確実に10%に増税となり、原発も再稼働。そして何より名護市辺野古の新基地建設も、県知事選で沖縄の民意が10万票の大差で「移設ノー」を示したにもかかわらず、建設を強行の構えだ。
■衆院選も移設ノー示せるか
今回の衆院選は、その沖縄にとって1月の名護市長選、11月の県知事選に続く辺野古移設への3度目の民意を示す選挙となる。それは同時に政治不信を招いた自民現職4氏の公約撤回を許せるかどうかが問われる選挙でもある。
そのため県知事選で翁長雄志氏を当選させた県議会野党会派と那覇市議会保守系の新風会などの「建白書」勢力は、今回の選挙でもその体制を継続し「公約破棄の自民議員に鉄槌(てっつい)を下し、これ以上の基地負担は受け入れないを今回の選挙でも示す」と1~4区全員の当選を目指す。
突然の総選挙で与野党逆転の可能性は低いが、自公が大きく議席を減らせば危うい道を突き進む安倍政権の暴走と沖縄差別に制約をかけることはできる。政権運営は与野党が拮抗(きっこう)し緊張感があることが望ましい。