今年のノーベル平和賞候補に上り、内外から注目を集めた「憲法9条」は残念ながら受賞とはならなかった。しかしノルウェーの民間研究機関が最有力候補に挙げ、日本の戦争放棄の理念を全世界にアピールできた意義は大きく、今後も可能性なしとはいえない▼今年の平和賞の特徴は、パキスタン人の17歳少女とインドの60歳男性の2人の授賞理由が示すように、「子どもや若者への抑圧に反対し、すべての子どもが教育を受ける権利を求めて奮闘している」ことにある▼日本では子どもが学校に行くのはごく当たり前のことだ。しかし世界では1億6800万人もの児童が労働に従事して教育を受ける権利を奪われ、それが紛争と貧困と暴力の連鎖を生んでいる▼それだけに私たちもあらためて教育の大切さを認識し、子どもたちにもきちんと自覚させる必要がある▼しかし日本も、その当たり前に陰りが出ている。それは格差社会の広がりで深刻さを増した「子どもの貧困」だ。親の経済状態や生まれた環境で子どもの将来や教育を受ける権利が損なわれてはならない▼それにしても憲法9条のノーベル賞候補に首をかしげる声があったが、確かに改憲派は戦々恐々だったかもしれない。これでさらに憲法を骨抜きに、首相らがどこまで暴走するか気がかりだ。(上地義男)
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