■朝日新聞の「誤報」から学べ
今年、新聞業界は朝日新聞が報じた過去の慰安婦の強制連行証言と、東京電力福島第1原発事故をめぐる吉田昌郎元所長の聞き取り調書(吉田調書)の二つの「誤報」で揺れた。これに対する朝日新聞側の訂正、謝罪の遅れもあり、批判が広がった。
新聞は、記事の正確性、公平性、客観性などに基づく読者との「信頼」の上に成り立っている。その根底を揺るがす「誤報」や「訂正」は、本来、あってはいけないことだ。だが、本社も含め、各新聞社で発生している現実的な問題だ。
今回の事態を朝日新聞だけの問題とせず「他山の石」として各報道機関が、自社の報道のあり方、報道内容の正確性、公平性、客観性をあらためて検証する機会としたい。そして、問題があれば速やかに改める勇気を持つべきだ。それが、揺らいだ信頼を回復する道だろう。
■強まる国の圧力
一方、今年2月、琉球新報が報じた陸上自衛隊警備部隊候補地の記事で、防衛省が日本新聞協会と同社に文書で抗議と訂正を申し入れる異例の事態が起こった。
同社は2月23日の石垣市長選挙の告示日に陸自警備部隊配備先として石垣市の2カ所が候補に挙がっていると報じた。選挙への影響を懸念した国が関係大臣の会見などで事実を打ち消し、防衛省が「事実に反し、公平さにも欠ける」と日本新聞協会と同社に抗議と記事の訂正を申し入れたのだ。
この行為は、「表現・言論の自由」と「国民の知る権利」への国家権力の圧力、介入であり、決して認めるわけにはいかない。
特定秘密保護法が制定され、国民の知る権利が狭められる恐れがある。権力の監視、真実を追求する報道姿勢を貫くためにも社はもとより、取材する記者自身にも国家権力の圧力に屈しない断固たる決意と取材力が求められよう。
■読者目線の新聞
新聞の果たす役割は、日常のニュースをはじめ、あらゆる情報を正確に分かりやすく伝えること。速報性こそテレビやインターネットに譲るものの、記録性、詳報性、そして、いつ、どこでも読むことができる「携帯性」は新聞に勝る物はないだろう。
だが、その新聞購読者数は年々減り続け、日本新聞協会の調査では、1世帯当たりの購読部数は、2008年に1を切り、13年には0.86にまで減少。沖縄は0.62とさらに低く、県別の世帯普及率は2番目の低さだ。若者の新聞離れが顕著だ。
新聞を作る側として、この現実を真摯(しんし)に受け止め、読者は新聞に何を求めているのか、記事が作る側の押し付け、情報の垂れ流しとなっていないか、検証し、新聞を読んでもらう努力が必要だろう。
「ふるさとが 元気と知った 今日の記事」を代表標語に第67回新聞週間が15日、スタートする。地域に根ざし、読者と共にある新聞本来の姿を表した標語だ。地方紙として「新聞週間」を、あらためて地域に根ざした住民目線の報道のあり方を問い直す機会としたい。