■前副町長は提案されるか
竹富町議会事務局は、今回の選挙で定員12人のうち半数を初の女性議員を含む新人が占めたことで、29日の新議会開会を前に16、17日に新人研修会を開いたのをはじめ、当選議員全員協議会を相次いで開き、正副議長や常任委員長の選任方法、執行当局や議員の席替えなどで事前調整を行った。
今回の選挙では当初、与党が多数を占め、逆転したとみられたが、中立系3人のスタンスが揺れ現段階では6—6で拮抗(きっこう)しているようだ。川満栄長町長には依然厳しい町政運営が続くが、しかし野党側も新人が増え、従来の対決色むき出しの攻勢が薄れるのは確かだ。
そういう新たな議会で注目は、川満町長が前副町長を29日開会の新議会に提案するかどうかだ。それというのも川満町長が2012年12月に退任した前副町長に固執。退任後、何度か提案し今議会にも再提案を明言していた前副町長が土曜閉庁の先月30日、役場を訪れ職員の机の上の書類を無断でコピーし、持ち出していたことが分かったからだ。
竹富町に対しては、先月の百条委員会で役場の特異な隠蔽(いんぺい)体質と町長らの規範意識欠如が批判されたばかり。それだけに同氏が提案されれば、あらためて町長の規範意識が問われることになり、町長の判断は注目だ。
■議会は移転賛成が過半数
新たな議会でさらに注目は、町役場移転の動向だ。川満町長が多数与党から少数与党に転じたのは、1期目の任期最後の3月議会で役場移転に向けて支所建設費を事前に与党と調整することなく突然計上したことが原因だ。役場移転に反対する与党議員らが次々離反し、これが12年9月に町長再選後も現在まで尾を引いてきた。
しかし今回の選挙結果は、与野党勢力は拮抗ながら役場移転に関しては賛成7、反対3、中立2と賛成が過半数を占めた。昨年1月、2期目の公約の住民投票を本年9月以降に実施したい意向を示していた川満町長は、今回の選挙後は「議員の皆さんと方向性を含めて段階を踏んで前に進めていきたい」と時期は示さなかった。果たして住民投票はいつ実施されるのか。
■有識者が“提言”まとめへ
しかしこの住民投票実施に関してはやはり疑問がある。確かに住民投票で賛成、反対の民意は明確に示される。ただ投票結果には法的拘束力がないため、その結果を賛否両派の町民が素直に受け入れるかどうか疑問だからだ。
竹富町の市町村合併住民投票をはじめ、過去に結果が覆された例は全国的に少なくない。「結果に従う」という法的拘束力や担保がなければ、財政負担も大きい住民投票は予算の無駄、時間の無駄、労力の無駄というものだ。
ただ今回に関しては、去る3月に竹富町新庁舎のあり方検討有識者委員会(上妻毅委員長、10人)を発足させ、西表への役場移転を前提に町民の合意形成に向けた審議をスタートさせた。今後4、5回会議を開いて方向性を示すことになっており、住民投票はその提言を待って実施されるべきだろう。
そして住民投票では、当然同会議の提言も設問に織り込み町民の判断を問うべきだ。その上で「結果に従う」というなら住民投票の意義は大きい。