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現在地か、高台移転か

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■市議会も議論本格化へ

 築44年を経て老朽化が著しい市庁舎の建て替えを迫られる石垣市は、来年3月までに現在地で建て替えるか、高台に移転するかを決定する。近く発足予定の新庁舎建設基本計画策定委員会で論議し決定されるようだが、新空港のように別個に選定委員会を設置し、選定の必要はないだろうか。

 市議会も去る7日の選挙で新議員が決まったことから、決定に向けた論議が本格化する。本紙アンケートによると当選者22人は、現地建て替え6人、旧空港跡地などの高台移転3人、13人は現時点で判断できないと回答を留保しており、論議が割れそうだ。

 市庁舎の移転に関しては、2009年3月に策定された空港跡地利用計画で一度は同跡地への移転案が示された。これに対し美崎町や中央商店街から「役所が移転すると、街の中心は大型店などが立地する新興地区の南大浜地区に移り、美崎町や中央商店街がすたれる」と不安の声が上がり、これを受けて市も移転しない方針に転じていた。

 

■移転しない方針に疑義

 しかしこの方針に疑念を持たせたのが11年3月の東日本大震災だ。地震による大津波で岩手、宮城、福島などの海岸線のまちが軒並み未曽有の大被害に遭い、1万8000人余の命が奪われる大惨事となった。

 八重山も240年以上前に、人口の3分の1の9000人余が犠牲になる明和の大津波があった。それだけに市役所が立地する美崎町も海岸線の埋め立て地であり、地震で液状化の恐れがあると同時に大津波で壊滅的な被害の可能性があるとして、災害時の司令塔となる市役所は高台に移転すべきだの声が内外から出て、現在地か高台移転かの論議になっている。

 ただ高台移転に関しては以前にも疑問を提示したが、市民も役所もみんなが一緒に高台に移転するなら大いに賛成だが、役所だけ安全・安心の旧空港跡地などの高台に移転し、一般市民は低地に残すというのはやはり疑問だ。

 役所と市民は生きるも死ぬも一緒の「運命共同体」で防災対策は進めるべきであり、お上の役人は安全な場所にいて下々の庶民は危険な場所にさらす「お上下々」的な防災対策は避けるべきだ。「司令塔は高台に」というなら既に消防が旧空港跡地の高台に移転している。その役割は可能ではないか。

 

■1人も犠牲出さない備えを

 中山義隆市長は本年度の施政方針で「災害時に1人の犠牲者も出さないという思いで防災対策を進める」と強調した。津波は逃げる間もなくあっという間にやってくるという。それなら津波の避難ビルを埋め立て地一帯だけでなく、海岸線の低地にあるすべての集落に設置し確保すべきだ。

 しかもまちには常に大勢の観光客がいる。市は現在も多くの避難ビルを指定しているが、それだけでは不足だ。

 役所を現在地で中高層に建て替えることにより避難ビルや司令塔としての防災機能を果たし、さらにそれが美崎町など商店街の振興に寄与できるならあえて高台に移転の必要はない。災害時の避難対策は無論重要だが、その前に市は市長が言うように1人の犠牲も出さない備えに万全を期すべきだ。


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