■上質な沖縄料理が不振
昨年12月、ユネスコ(国連教育科学文化機関)は、「和食」の食文化が自然を尊重する日本人の心を表現したものであり、伝統的な社会慣習として世代を超えて引き継がれているとして無形文化遺産に登録した。「食」分野ではフランス、地中海、メキシコ、トルコに次ぎ5件目の登録となり、世界各地で日本食ブームが起こっている。
アメリカの大手旅行雑誌(トラベル+レジャー誌)の観光地ランキングで、本年度は京都が人気世界一となったが、京都は上質な異文化体験と居心地の良さ、和食がポイントを集めた。中でも「京料理」は、舞子さんや伝統的な風情の中に溶け込んでいて評価が高い。
琉球王朝時代の宮廷料理も塩、みそ、しょうゆ、かつお節、昆布を用い、日本料理と中国料理の影響を受けながら独自の発展を遂げてきた。戦後、米軍統治の影響で食生活の欧米化が進んだことで、長寿の源であった本来の沖縄料理は廃れ、健康長寿県1位の名誉を返上、男性は都道府県30位に転落した。
■観光消費額10万円が6万円に減少
平成10年の八重山観光は51万人の観光客で1人当たり9万9000円(航空運賃除く)の消費があったが、昨年は94万人の観光客が1人当たり6万1000円の消費額となり、40%弱も減少している。単純に言えば八重山という商品が10万円から6万円に下がったということだ。その中で飲食費の割合は約19%を占め、大きいものがある。
当時は会席やコース料理付のツアーが多かったが、デフレの進行、所得の低迷、格安ツアーの横行により上質な料理から金をかけない居酒屋中心の食事へ変化している。消費行動は低価格化へ進み、料亭、割烹、ナイトクラブは姿を消した。しかし一方で1泊数万円の宿泊施設が繁盛していることも現実で、旅客のニーズは多様化している。
■「食の島」のブランド発信
近年、石垣市観光交流協会は星の島、花の島として宣伝中だが観光客の安定的確保や観光消費額を回復させるために食について行政や地域を巻き込んで本格的に取り組む必要があるだろう。
八重山には石垣牛をはじめ、本マグロ、伊勢エビ、シャコ貝、モズク、長命草、アダン、オオタニワタリ、パイン、マンゴーなど優れた食材が多い。
石垣牛BBQ大会が人気に火をつけたように「食の島」としてのブランド発信が重要だ。八重山調理師組合が開催している料理コンクールを再編強化し、行政主導で料飲サービス、飲食業、農協、漁協等と連携した総合的な料理コンクールへと変換し、上質な空間と食の魅力を創造・発信する必要がある。
新空港開港後八重山経済は活況で、沖縄公庫八重山支店によると、創業支援融資が昨年比2倍の4億円余になったという。愛知県渥美半島観光ビューローが主導する「どんぶり街道」は43軒が参加。特産品の大あさりやしらす、渥美牛、渥美地鶏などで工夫を凝らし、スタンプラリーでリピーターを獲得している。本島本部町は「沖縄そばの町」を宣言し、70店舗で組織、誘客につなげていることなどは石垣市にとっても参考になるだろう。