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町長の規範意識を疑う

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■公文書の日付を改ざん

 竹富町議会百条委員会の調査報告に対する川満栄長町長の発言に正直驚いた。2012年度一般会計補正予算の専決処分決裁日時について、自らも訂正を申し出て不適切な事務手続き・処理があったことを認めながらも、「職員を信頼して仕事しているので違法性の認識は全くゼロだった」とか、「百条委は誰にも利益を与えていないし、町民にも職員にも議会にとってもマイナスだった」などの一連の発言だ。

 町長は関係法令を順守し適正に運用すべき町役場のトップでありながら、それは法やルールを守るという規範意識の欠如を疑わせるような発言だ。

 そもそもこの問題が、町長と多数野党のぎすぎすした政治的対立から生じたものとしても、百条委で問われたのは町当局の事務処理に違法性があったかどうかだった。それが遡及(そきゅう)決裁で不適切な事務処理があったことに対し、少しは謙虚に反省の弁があるかと思ったら、野党の百条委を批判し、規範意識欠如の開き直りとも取れる姿勢だ。

 

■町長の関与疑い濃厚

 川満町長は遡及決裁への自らの関与について言及を避け、一方で「職員を信頼して仕事しているので」と何やら担当職員や副町長不在に責任を転嫁するような発言も。しかし役場の仕組みからいってこういう重要な問題は通常トップとの協議事項であり、職員が独断で行うことは難しく、町長の指示・関与があった疑いは避けられない。

 だから町長も、百条委員会が設置されて違法性が明らかにされれば補助金返還もあり得ると、自らの責任の重大性も認識していたからこそ一度は辞職を決意したと見るべきだろう。

 その割に一貫性がなく辞職を撤回したため今回の事態に至ったが、そこで皮肉にも浮き彫りになったのが組織挙げてミスを隠す役所の隠蔽(いんぺい)体質だ。町長が言う百条委のマイナスは今後の焦点である補助金返還のこととみられるが、その原因は法を守らず不適正な事務処理の町当局にあり、その場合は当然町長の責任が追及されるだろう。

 

■隠蔽体質の役所組織

 竹富町に限らず一般的に役所には、不祥事やミスを組織挙げて隠蔽する体質があることはよく指摘されるところだ。心理学者の岸田秀氏は著書「官僚病の起源」でおおむねこう述べる。

 ▽役所は本来国や国民のためにあるが、自己目的化し仲間内のメンツと利益を守るための自閉的共同体になっている▽仲間には配慮が行き届き、実に心優しいが、仲間以外には無関心で冷酷無情▽身内の恥は外に漏らさず、組織の失敗は徹底的に隠匿し責任者を明らかにしない▽したがって責任者は処罰されず、原因も追及されないから、同じような失敗が無限に繰り返される。

 百条委は、職員が巻き込まれる恐れを理由に告発を見送ったが、職員も不適切な行いがあれば、当然それ相当に責任は問われるべきだし、これも野党議員の規範意識が疑われる対応だ。

 竹富町では13年度の事業を年度内に執行できず5800万円余を国に返納したり、源泉徴収業務を怠って延滞料を求められたりなど大小のミスが頻発したが、結局こうした体質がミスを繰り返させており、その体質が改められない限り再発は防げないだろう。


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