■地域の知の拠点
五穀豊穣(ほうじょう)を願うにぎやかで多彩な各地のプーリィ(豊年祭)と、旧暦13日から15日までの間に行われた先祖供養のソーロン(旧盆)も終わり、うだるような暑さの中にも、そろそろ赤とんぼが飛び交い、秋の気配が少しずつ訪れつつある。読書に最も適していると言われる秋を前に、本を読む環境、図書館などの施設についてあらためて考えてみよう。
「図書館は各地における『地域の知の拠点』として、国民の生涯にわたる自主的な学習活動を支え、促進する役割を果たす必要がある」(文部科学省「図書館の在り方検討会議資料」より)と、的確に述べられているように、新たなメディアがごく普通に日常生活に入り込む高度情報化時代を迎え、新空港の開港などによって交通体系が飛躍的に進化し、加えて少子化、高齢化などによって、私たちの日々の暮らしとともに、読書環境も大きく変わってきている。
蔵書の大幅な増加に対応するため、石垣市立図書館が新収蔵庫を整備する計画が進められている。(本紙8月5日「収蔵庫、7万冊分整備」参照)同館は、1990年の開館から24年がたち、蔵書が当初想定した25万冊を超えて、本年3月末には26万3000冊余となっていることから、4階に新たな収蔵庫を整備する予定だという。
計画によると、同館4階部分に可動式書架を整備しておよそ7万冊を収容するようであり、この施設整備によって、図書館のさらなる充実が期待できるとともに、新たな事業の取り組みを進める好機と言えるだろう。
■住民の協力も必要
新収蔵庫の整備を契機として、各家庭や公的機関、民間の団体等に眠っている書籍やパンフレット等の印刷資料、写真やカセットテープ・CD、DVDなど音楽や映像資料の寄贈や交換あるいは寄託などを行うことによって、私たちの知的活動を活性化する方策はないものだろうか。
多くの家庭や公的機関、民間企業などで古い資料や読み終えた本などが片隅に追いやられている状況がある。活字離れが言われて久しいが、嘆いてばかりいても仕方がない。マスコミも含め、できるだけ本や音楽などに親しむ機会をつくる必要があろう。川平、伊原間で実施している移動図書館も大きな効果があるが、他の取り組みも考える必要がある。
■本や資料の有効活用
現在、高い評価を得ている市立図書館の持ち帰り自由な「本のリサイクルコーナー」をさらに充実、広報宣伝するとともに、ボランティアや団体、個人などの協力も得て、資料を収集し、設置場所を拡充する方法もあるだろう。大切な本を有効に活用する一つの手だてとしても有意義であるし、CDやカセットテープ、DVDなどの交換の場としての活用を検討してもよいのではないか。
例えば、与那原町が実施していた自由に持ち込み持ち帰れる「まちかど図書館」などをヒントに、各地域の公民館ロビーなどにコーナーを設け、読み終えて不要になった本を希望者に持ち帰ってもらう取り組みなども考えられる。
いずれにしても、貴重な資料を死蔵させることなく、作者や発行人の期待に応えるためにも、再び日の目をみせてあげられるよう、あらためて考える必要があるだろう。