2025年第23回石垣島凧あげ交流会(同実行委員会主催)が29日、南ぬ浜町人工ビーチで行われた。全国各地の凧が、海から吹き寄せる南寄りの季節風「夏至南風」(カーチバイ)を受けて高々と大空に舞った。今回初めて青年会対抗大会も行われ、若手世代が八重山伝統の凧文化に触れた。(3面に写真特集)
全国の凧愛好家が一堂に会し、凧文化の伝承・発展と青少年の健全育成を図ることを目的に開催されており、八重山凧愛好会(金城珍章会長)のほか東京、神奈川、石川、長野、愛知、鹿児島など島外から29人が来島した。
午前10時から開会セレモニーを行った後、参加者は自由に凧をあげた。八重山伝統のシャクシメーや八角のほか巨大な布団凧や連凧、イカやコウモリ型の凧など個性豊かな凧が青空に並んだ。この日は快晴で最大瞬間風速は7㍍近くになるなど絶好の凧あげ日和。家族連れなど300人近くが訪れた。第1回青年会対抗凧あげ大会には平得、大浜、宮良、白保の青年会と石垣市青年団協議会のメンバーが参加。事前に八重山凧愛好会の指導で作り上げた八角を大空にあげ、大会を盛り上げた。
宮良青年会の宇根底師陸さん(25)は「難しいかと思ったがこつをつかめば意外と楽しい」と笑顔。約20年ぶりに凧あげに挑戦したという同協議会の大浜雅史会長(30)は「作り方もあげ方も今回一から学び、いい勉強になった。各青年会が一堂に集って交流できる機会はなかなかないのでありがたい」と感謝した。
恒例の目玉イベント「空からお菓子のプレゼント」ではシャクシメーの仕掛けから降ってくる当たり付きの菓子を目指し、子どもたちが争奪戦を繰り広げた。
参加した黒島慶介さん(6)と大浜美祈さん(6)はおかしとフィギュアをゲット。「もっととりたかったけど楽しかった」とそれぞれ声を弾ませた。そばで見守っていた慶介さんの母・ひかるさん(36)は「去年初めてお菓子をとって、ことしも行こうねと楽しみにしていた。1つでもとれたので良かった」と話した。
県外参加者のうち20年以上通っている日本の凧の会の川口顕裕さん(75)は「青い海と青空の中であげられて最高。会員の高齢化で全国各地の大会が減ってきている中、石垣島はまだまだ元気。若い世代も育っておりうらやましい」と大会のさらなる発展に期待。金城会長は「大成功。今後も青年会を中心に伝統凧を継承していけたら」と語った。
受賞者は次の皆さん。
▽実行委員会会長賞=内川登茂三(日本の凧の会足立支部)▽かけはし大使賞=中村寿(江戸凧保存会)▽シャクシメー大会賞=①松竹勝彦(武蔵大井凧の会)②相澤広司(日本の凧の会横浜支部)③仲間清隆(八重山凧愛好会)
■竹富島出身松竹さん フクダーあげ「最高」
竹富島出身の松竹勝彦さん(77)=埼玉県在住・武蔵大井凧の会=は念願だった石垣島凧あげ交流会に初参加した。竹富伝統の凧「フクダー」をあげ、シャクシメー大会で1位を獲得するなど故郷での交流会を満喫した。
松竹さんは学生時代を竹富島と石垣島で過ごし、県外で就職後、1990年に武蔵大井凧の会を立ち上げ。荒川の河川敷での凧あげ大会を主催してきた。石垣島大会は以前から知っていたが仕事の都合が合わず、今回「やっと参加できた」。
石垣島で「ピキダー」にあたる「フクダー」には種子取祭の演目「鬼狂言(ウンキョンギン)」に出てくる鬼を描いた。最大の特徴は「ミンパネー」と呼ばれる凧の両端下部についた三角形の尾羽。糸目(シャク)は本土式に仕立てている。
「子どもの頃からずっと作っている」という凧。これまでに弥勒の凧を作り故郷に送ったこともある。会場の南ぬ浜町人工ビーチは「島にいる頃はまだ埋め立ての最中だったなあ」と振り返り、「石垣島は第二の故郷。参加できて最高の気分」と笑顔を見せた。