新空港開港で昨年は94万人もの観光客が訪れるようになり、さらにその数は増え続けている。地域経済への恩恵は大きいが、困ったこともある▼食文化の変化だ。さまざまな店が開店し、外国の料理も楽しめるようになった。全国チェーンの店や居酒屋も増えた。食事の選択肢が広がり、店の雰囲気も楽しめる▼ところがメニューにあまり違いがない。もちろん創作料理などで特徴を打ち出している店もあるが、全国のいたるところで見られる定番メニューがずらりと並ぶ▼その料理は、個人的に食傷気味だ。食べ慣れた中身汁やイナムルチー、ゴボウ巻き(肉巻き)ほかの昔懐かしい家庭料理を味わいたいが、扱う店が以前に比べて大幅に減った▼それをメニューに並べても、手間暇がかかる割に注文する人が少なく、採算が取れないのかも知れない。市内で核家族化が進み、昔の料理をあまり知らずに育った若い世帯が増えていることが背景にあるのかも▼このため那覇出張時には、必ずというほど伝統料理を食べる。那覇市ではその店も簡単に見つかる。この違いは何だろうか。沖縄本島ではまだ方言が残り、八重山では消滅しつつある。沖縄伝統の味も八重山は「黄信号」だ。観光地として、伝統食の継承・提供が島の大きな魅力、差別化につながると思うのだが。(黒島安隆)
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