南ぬ島石垣空港が開港して2回目となる夏場の観光トップシーズンを迎え、宿泊業界では、2008年のリーマンショック以降下げ止まったままの客室料金(客室単価)を元に戻す動きが広がっている。“薄利多売”で忙しい割には利益が上がらないという経営を強いられてきた業界にとって、開港2年目はチャンスの年。ホテル関係者は「新空港効果を利用して客室単価のV字回復を図りたい。年内には元の単価に戻したい」と意気込んでいる。
■好調な入域客数
県八重山事務所の入域観光客数統計によると、今年の観光入域客数は▽1月5万6676人(前年同月1万2462人増)▽2月6万9666人(同1万9106人増)▽3月8万7520人(同9654人増)といずれも前年を上回るペースで推移。観光関連業者によると4月以降も順調だという。
航空各社は、観光需要の伸びを見据え、夏場のピークに合わせて本土便を中心に増便や中型機の導入を計画。航空会社の関係者は「搭乗予約は順調」と話している。
8月の宿泊予約状況が80%を超えている市内ホテルの担当者も「航空各社も送客に貢献し、八重山観光は好調を維持している。宿泊客のオーバーブッキングは避けられないのでないか」と予測する。
■「戻しても来る」
こうした好調な観光需要を背景に、1000~4000円の範囲で引き上げに踏み切るホテルも増えている。担当者は「客室を安く提供していた分を取り戻し、苦しい経営状態から早く解放されたい」という。
一方、リピーターの一部からは「昨年より高くなった」との苦情が寄せられているという大型ホテルの担当者は「値段を引き戻しても客は来る。この時期に引き上げないとタイミングを逃してしまう」と言い切る。
中型ホテルの担当者は「昨年の開港効果で客室単価を少しでも戻せておればよかったが、まさか94万人という観光客は誰も予測できなかった。今年で客室単価を戻せば売り上げも回復する」と期待する。
■狙うは個人客
業界によると、団体客などのツアーは単価が安く設定され、グレードが高い部屋でも低く抑えられるという。売り上げを伸ばすには、フリーの個人客(FIT)にどれだけ利用してもらえるかどうかがカギ。
地元資本でホテルを経営する美ら花グループの親盛一功代表取締役社長総支配人は「FITをどれだけ獲得し、受け入れるかがポイント。現在はネットを活用して予約する個人客が多い。ホテルのホームページなどで独自商品の売り込みと販売促進を強化したい」と話している。