■空々しい安倍首相の言葉
23日は沖縄戦終結から69回目の「慰霊の日」だった。この日は八重山を含む県内各地区で慰霊祭が催され、沖縄は平和の誓いを新たにする鎮魂の祈りに包まれた。
糸満市摩文仁の平和祈念公園で開かれた県主催の沖縄全戦没者追悼式には安倍晋三首相のほか岸田文雄外相、小野寺五典防衛相、キャロライン・ケネディ駐日米大使ら日米両政府の要人が参列した。仲井真弘多知事の平和宣言の後、安倍首相が来賓あいさつしたが、「戦争を憎み、平和を築く努力をする」「米軍基地の負担軽減に全力を尽くす」の言葉が何とも空々しく、むなしく聞こえたことか。
それは積極的平和主義と言いつつ、巨大与党をバックに国民の半数以上が反対する集団的自衛権の解釈改憲で逆に戦争する国に突き進み、県民の間に戦争再びへの危機感は強い。さらに米軍基地も沖縄の負担軽減どころか、オール沖縄の反対を押し切って米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を強引に進め、戦後一貫して変わらぬ過重な基地負担で差別を強いているからだ。
それはまさしくみ霊に対し口先だけの平和の誓い、沖縄の負担軽減でありそれを言うなら行動で示すべきだ。
■大きい平和学習の役割
ところで本紙は、沖縄戦終結から69回目の慰霊の日を迎えるに当たり、初めて郡内の小中高校生に対し沖縄戦に対する意識調査を行った。それは戦争を知らない戦後世代が県民の8割を超し、沖縄戦の風化が進んでいることから、郡内の児童生徒が沖縄戦や慰霊の日、戦争マラリア、本土復帰の日を知っているかどうか実態を探り、今後の平和学習の一助とするためだ。
その中で明らかになったのは、5割以上が知らないとする5月15日の「本土復帰の日」以外は、沖縄戦、慰霊の日、戦争マラリアとも子どもたちの認知度は高く、それは「慰霊の日」を前にした各学校での平和学習によるところが大きいということだ。
もし各学校での平和学習がなければ「戦争」や「平和」に対する意識はさらに低下していたであろうし、戦争体験者が年々確実に減っていく中で学校の平和学習はますます重要度を増している。そういう意味で各学校や担任教師らの取り組みを高く評価し、今後とも今回の本紙の調査結果も参考にして引き続き取り組みを求めたい。
■若者たちが再び戦場に
「慰霊の日」の追悼式の言葉と裏腹に、戦争する国に猛進する安倍首相の強行の背景には、近隣諸国からも警戒される日本の右傾化がある。安倍首相をはじめ、ほとんどの政治家が戦争を知らない世代となり、戦争のむごさ怖さに対する想像力の乏しさが要因だ。
それだけに国内唯一の地上戦を経験した沖縄は、「子どもたちを再び戦場に送らない」ためにも、平和学習を充実強化し被爆地のヒロシマ、ナガサキと共に全国の政治家や国民に平和のありがたさを発信する必要がある。
その上で今大切なことは安倍首相の暴走をどう止めるかだ。公明党が集団的自衛権を認めれば自衛隊の若者らが戦場で命を失い、日米軍事要塞(ようさい)の沖縄は再び攻撃を受けかねない。