■サンサンマルショック
かつて長寿を誇った沖縄県が身から出た錆(さび)とはいえ、健康長寿ブランド崩壊の厳しい局面に立たされている。5年に1度公表される都道府県別生命表で沖縄県は、女性が1位から3位へ(沖縄県87.02歳、全国86.35歳)、男性は25位から30位(沖縄県79.40歳、全国79.59歳)に順位を下げ、「サンサンマルショック」と呼ばれる事態を受けて、県民の多くは危機感に襲われている。
男性は2000年以降、全国平均を下回っていたが、女性は今回初めて1位の座から陥落し、このまま推移するとさらに順位を下げ、特に男性は下位グループに定着する恐れが高いと懸念されている。平均寿命の延びが他県より鈍くなっている要因は、20歳から64歳までのいわゆる「働き盛り世代」が全国の死亡率より悪いことが指摘されている。疾患別ではがん、急性心筋梗塞、脳血管疾患といった生活習慣病の合併症やアルコールを原因とする肝臓病、自殺などによる死亡率が高いといわれている。
■やればできる
石垣市においては沖縄県の平均寿命より悪く、地元新聞の死亡告知欄から見ると、働き盛り世代の早世が目立ち、やるせなく感じられる方が多いのではないだろうか。八重山の魅力「地域ブランド力」は、恵まれた自然環境と地域に根差した暮らしや文化、人情あふれる人間力で構成され、それを中心で支えているのは、今をたくましく生き抜く「おじい、おばー」達であり、現役世代がこのように早世では世代間にわたる伝統文化の引き継ぎが困難になってくる。
1958年当時、脳卒中死亡率が全国最悪だった長野県は、高血圧症を防ぐ「減塩運動」を展開。保健師の活動を補助する保健補導員と食生活改善推進員の活発な活動などが功を奏し、肥満者や喫煙者の割合が低くなり、男女とも長寿1位となったことは、沖縄県もやればできることを教えている。
■予防が肝心
八重山における早世の原因は、生活の欧米化による食習慣や、観光客の増加による多様な食文化の受け入れ等、グルメや飽食の時代の到来で生活習慣が大きく変化したことが考えられる。
先人たちの野菜や魚中心の食生活から現代は肉料理やファストフード、ビール、泡盛のはんらん、歩かない車社会の毎日へ変化している。暴飲、暴食、喫煙、運動不足が重なり、生活習慣病のお世話になる方は毎年増加しているという。
飲酒の末の深夜の締めはステーキ、揚げ句の果ての路上寝こみはまさに末期的症状といっても過言ではない。石婦連などが提唱していたシンデレラタイム(午前0時までに帰宅する)運動は忘却のかなたに去った。沖縄県は、「健康長寿おきなわ復活県民会議」を発足し、長寿県復活プロジェクトを推進しているが、長野県のように減塩運動など具体的目標の設定や県民ぐるみの取り組みが弱く、広がりに欠けている。
しかし何事も予防が肝心。石垣市においても健康福祉センターで行っている集団検診や医療機関での特定健診、チャレンジデーの開催など、身近な健康長寿の取り組みから始めたいものだ。