だれにでも、読んだ本の中で大切なことを教えられた、勇気付けられた、価値観が変わったなど心に残る作品があると思う▼一冊の本が人をそこまで駆り立てるのかと印象深かったのが、今年3月学校司書を定年退職した波照間良子さんの体験。30余年前に読んだ光吉智加枝著「だめの子日記」に強く心を打たれ、今は亡き智加枝さんの故郷、岡山県鏡野を訪問し墓参と生家を訪ね、ご両親に会ってみたいという長年の思いをかなえたのだ▼思いがけない訪問者にご両親も大感激。旅行記は本紙に掲載されたが「光吉家との新たな交流の始まりを心から喜びたい」と結んでおり、波照間さんのうれしそうな表情がとても印象的だった▼大人になるにつれ、何となく本を読まなくなったという人も多いのでは? ある研究によると読書は単なる娯楽ではなく、心身の健康に良い影響があることが分かったという▼子どものころから読書習慣があるなど継続的に脳を刺激していると、アルツハイマー病の原因物質ベータアミロイドの形成を抑制できる研究結果もあるそうだ▼また読書は孤独を感じさせにくくする効果や心をリラックスさせ、ストレス軽減にもなるという説も。秋は読書の季節。しばらく本を開いていない人も健康のために読書を始めてみてはいかがですか。(辻本順子)
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